長い夢
「これも能力なんだな」
ヴァンクールがフェリーチェを振り返り言い放った。
ヴァンクールが首を切り落としたはずなのに、何事もなかったように平然と立っているフェリーチェ。
ヴァンクールはずっと頭の中でどんな力なのか推理しているが全く出てこない。
「わたしの力は創造のちから。守る力です。」
フェリーチェはサラサラの髪をなびかせながらヴァンクールに近づく。ヴァンクールは後ずさりするもフェリーチェの穏やかな顔に安心したのかその場にとどまった。フェリーチェはヴァンクールの手を取ると、顔を覗き込んだ。
「あなたには守りたいものがありますか?」
ヴァンクールはハッとしたように目を開いてから伏せた。
「全部なくなってしまったな。」
その一言でフェリーチェは一同を振り返った。
「私の力は守るべきものを失った瞬間存在を失うというものです。ですからヴァンクール。あなたはこの力を得た瞬間に死んでしまいますね。」
フェリーチェは一同を見渡しながら、
「いま一番守りたいものがあるものにとってはとても強い力です。しかしすでになくなってしまっていたり、思いが小さいと逆に悪影響を及ぼしてしまいます。死です。
私はこのエデンを守らなければなりません。この三百年の間私は一人でこのエデンを守ってきました。ここにいる従者たちや、人々、美しい装飾や家具、食べ物は全て私の夢です。 」
従者たちには聞こえていないのだろうか、せっせと各々の仕事をこなしている。
「この土地にあるのは流れる水だけ。わたしは現実から目を背けるために目を閉じて、長く夢を見すぎました。自分の姿ももう覚えていません。」
フェリーチェは自分の顔を触りながらつぶやいた。
「しかし夢の中で生き続けるということにも終わりを迎えるべきだと考えています。」
フェリーチェは悲しげな顔で
「必ずこの力はお譲りします。もうしばらく時間をいただけませんか?誰がこの力に相応しいのか見極めることが私の最後の仕事です。」

[*前へ][次へ#]

19/33ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!