悪夢
「みなさましっかりつかまって!」
エースが大声を上げながら、自身手前のレバーを思い切り引いた。機体が回転しながら思い切り傾く。この戦闘機に乗ってからはじめて重力を感じた。先ほどの化け物に捕まれている気配はない。ふりきったのだろうか。
「すっごい!ものすごく早いよ!」
シエルがうれしそうに窓の外を眺めながら声をあげた。
「皆さん気をつけてください!」
エースが声をあげた瞬間
「うっ!」
アシェルの頭の中を何かが入り込んできた。
(俺の頭の中に)
あの化け物だ。あの化け物がジッとこちらを見て、血まみれの顔が笑ったような気がした。
その瞬間、
頭の中にカストレ城の情景が広がる。
(この場所、見覚えがある。)
「俺たちを殺す気だ」
エレベーターの中で目の前には血まみれで何回も殴られた後のあるヴァンクールがつぶやいた。
(ああ、思い出した。)
フレイルとコミュニケーションがとれない。

バキッ
拳の音。
銃を構えた兵士が倒れた。
「何をするのです!?フレイルさん!」
駆けつけたフレイルが兵士を殴っていく、
武装した兵士が
「心刀を逃がす気か!?」
と叫ぶ。
生きているフレイルだ。
「フレイル逃げろ!」
アシェルはとっさに叫んでいた。
剣を抜かずに兵士と戦い続けるフレイルにこの声が聞こえるわけがない。

その瞬間、扉がしまり始めた。
そして先程の兵士がフレイルを指さして、
「この"非国民"を殺せ!」
バンッ
なんの躊躇いもなく、銃弾は放たれる。
完全に閉まる瞬間、銃声とともにフレイルが倒れた。

「フレイル!」
叫んだ瞬間、こんどはすぐ目の前にあの血まみれの顔が現れ一瞬視界が暗転した。



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