入り乱れた重力場

小屋の中はやはり狭かった。
そして汚かった。

「散らかってるけどゆっくりしてってね。」

無邪気に笑うミンティアだが、正直くつろげるスペースもない。
「それにしてもきったなたい部屋だね。」
ランナが周りを見回しながらボソッと呟いた。
「ランナしー!女の子の部屋なんだから。」
ヒロがランナの肩を叩いて、なかなかの声で注意する。
さすがにそれはミンティアまで聞こえただろう。
「うっ!王子が来るっていうんならわたししっかり片付けたよ〜!」
ミンティアは頬をふくらませて机の上の紙や食材を端に退ける。
「俺ならいいのかよー。」
若干拗ねたようにキセキがその退けられた紙から地図関連のものを引き出した。

「そうだ。
みんな壁を見てごらん。
あの一番大きいのがここ、アスメルの姿だよ。」
ランスが壁を指差した。
そこには大きな地図がはってあって、真ん中の黒い塔には大きくCastreと書いてある。

「やっぱりこの世界は……。」
サギリが興味津々にその地図をのぞきこんだ。
「そうですね。俺たちは元々丸かったのかなと考えています。」
キセキが不必要なまでにサギリに近づいて笑う。
「そうだな。俺もそう思うよ。」
ランスが顎に手を当てて、んー。と首を傾げた。
「それが何かによって、切り取られて今の姿になったって事か?」
アシェルは近くにあるロッキングチェアにすわって足を組んでいる。
「そういうことだ。
話せばながくなるんだが、それを仮定する理由はたくさんあるな。
この世界の島の切れかたについてだとか、重力、ブレイブブルーについてとかな。」
キセキは壁にもたれ掛かると真顔で呟いた。
こういうときにキセキは本当に頭がいいんだなと思う。

「ブレイブブルー?」
引っかかる単語だ。
「自然の牢獄だよ。
終身限定のな。」
ヴァンクールがアシェルの疑問の答えを簡潔に述べてくれる。
「ブレイブブルーに入ったやつは絶対に帰ってこられないんだ。
入りくんで、無茶苦茶な重力場のせいでな。」
キセキが上を指さしてへらっと笑った。
『この世界の空をブレイブブルーというんだよ。入ったら勇者って意味でね。』
フレイルが優しい笑みで付け足す。

「キセキ〜。なにか用があるから来たんじゃないの?」
少しでもスペースが出来るようにつとめていたミンティアが作業をやめてこちらを振り向いた。

キセキは頭をかいてへらっと笑い
「そうだそうだ。実は……」
と話を始める。


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あきゅろす。
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