金鯨バルムンク

「おーい。」

「ああ、みんな遅かったね。」
ランスが手を振って走ってくるランナに微笑んだ。
そのランナの後ろからぞろぞろと五人が歩いてくる。
アシェルの背中にはヒロが乗っていた。
「すいません、アシェルさん…。」
ヒロは恥ずかしそうに顔を隠しながらアシェルの上で小さく声をあげる。
「いやいや、怪我人は大人しくおぶられなさい。」
アシェルがニカッと笑いながら顔をあげた。


「ところで、どうやっていくんだ?」
ヴァンクールが腕を組んで、軌跡にもたれかかり、軌跡を見上げた。
「重いわ!
いや、俺がクレール島に通う手段と同じ方法だよ。
まあ、海上タクシーさまだよ。」

するとランスがゆっくりと海の方へ歩いていく。
「バルムンク!」

ランスが大声をあげた瞬間、海がもっこりと膨らむ。
そして、なにかが勢いよく海面から姿を現した。
「きゃあ!」
杏理が大声をあげた。

「金の鯨?」
現れたのは体長100メートルほどはあるだろう、大きな鯨だった。
サギリが目をきらきらさせながらとても大きな鯨に近づく。
「バルムンクだ。目が青くて美しいだろう。俺が名前、つけたんだ。」
ランスが優しく微笑むと、バルムンクも目をゆっくりと瞑った。

「じゃあ、こいつに乗って行くのか。」
ヴァンクールはバルムンクを見上げてポツリと呟く。


「杏理。」
ヒロがアシェルの背中からゆっくり降りると、尻餅をついている杏理に手を差しのべた。
「ヒロくん。行っちゃうんだね。」
杏理はヒロの手を掴んで立ち上がりながら、小さく笑う。
「うん。ごめんね。」
ヒロも微笑んだ。
本当に美しい目だ。

「いってらっしゃい。」
杏理も優しく微笑む。
その瞬間突然ヒロに腕を引かれたと思うと、そのまま抱き締められた。
「うん。いってくる…」
とても強い力だったが、杏理には心地よくかんじられた。


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