空間の力

〜時間はアシェル達が飛行船から降りた直後…〜


ヒロはアシェル達が出ていった扉が閉まるなり、
「シエル。ちょっと…」

と、船内のリビングへと歩いていった。
『なんだろね?』
シャインは目を丸くしてヒロの背中を眺める。
(なんであたしなんだろ。)

シエルはヒロがアシェル達がいる間に、誰かに問いかけていないことを疑問に感じながら、ヒロのあとについていった。


リビングに入るなり、ヒロは
「シエルって、アシェルさんや、ヴァンよりも魔力あったよね。」
と笑いかける。
「うーん。どうだろ。」
シエルが首をかしげると、ヒロは頬を掻きながら、
「みんな知ってる通り、俺は魔力が果てしなく低いんだよな。
でも、この前からずっと魔力を高める訓練をしてるんだ。」
シエルはその言葉にうなずく。
その後ヒロはリビングのローテーブルの上においてある銀色のリンゴを手に取った。

「ヒロ?」
シエルは目を丸くしてヒロの手の中のリンゴとヒロの顔を交互に見やった。

「なんで訓練してるのかというと、まぁもともと燃費の悪い空間の力をもっと使えるようにっていうのもあるんだけど…。」

ヒロはそういいながら、リンゴを手から落とした。

「わっ!」
シエルは目を丸くした。
普通なら、リンゴは音をたてて地面に落ちるはずだ。
しかし、リンゴは地面につかず、浮いている。

「なんで俺の力が"空間の力"っていうのか考えてみたんだ。
もし、俺が瞬間移動しか使えないのなら、"瞬間移動の力"でもいいはずだろ。」

そのまま、ヒロは浮いているリンゴに触れずに手をリンゴに近づける。

すると、
バキッ
と音をたてて、リンゴが破裂し、やっと地面にたどり着いたのだった。

「触ってないよね?」
シエルはおどおどしながら、地面に粉々になって落ちたリンゴを見つめる。

「うん。」
シエルがヒロを見上げると、ヒロは少し息を荒くしているようだった。
「やっぱり燃費は悪いのね。」
シエルは苦笑いする。

「そうだな。
でも魔力を高めれば、戦力になるだろ。」
と言って笑った。

『なりすぎて怖いわ。』
シャインが隣で目を丸くしている。
たしかにそうだ。
こんな力がいつでも使えれば、とんでもないだろう。
「その力はどんな力なの?」
シエルが静かなリビングのヴァンクールがいつも寝ていて、普段は使えないソファーに座ってたずねる。

ヒロもソファーに座って
「指定した物体を周りの空間から隔離して、その空間の圧力を自由に変えれるんだ。
もちろん重力とかも。」

「なるほど。」
シエルは顎に手を当てた。
たしかに燃費が悪すぎても仕方ない能力な気もする。

(でもヒロがあたしを頼ってる!)
シエルはパッと顔を上げて
「ちょっとだけ。あたしが教えてあげるよ。」


と嬉しそうに笑った。


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あきゅろす。
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