ティアラとゴースト
(死んだわ。)
と思った。
今まで感じたことのない程の激痛が腰を襲う。
サギリは気がつくと、目の前は壁だった。
パッと後ろを振り向くと、遠くに骸骨の姿がある。
サギリは廊下の端まで、ゴーストの攻撃によって吹き飛ばされたのだ。
まさに"逃げないと殺られる"という状況であった。
骸骨はゆっくりとサギリの方へと歩いてくる。
サギリは腰の激痛のせいで歩けず、しかも武器もない。
骸骨が手を上げ、黒煙がサギリにむかって勢いよく放たれたのをサギリは目を開いて見ているだけだった。
ーーーー
非常階段にはたいして被害はなく、先ほど同様真っ暗なだけであった。
「一瞬まって、」
キセキが少し階段を上がったところで止まった。
「物音はしないよな。」
一応、周りの様子を確認してからキセキは眼帯に手をかける。
アシェルとヴァンクールは黙って見ていた。
キセキは本来開いていた左目を閉じて、素早く右の眼帯を外した。
その瞬間、
「サギリさん!」
と叫んだのだった。
それは左目の視界をサラバの視界に移していたのだから、キセキはゴーストの視界を見ていることになる。…そこにサギリが登場するのだから、
「サギリさんが殺される!
…何階だ。何階だよ…。」
キセキが動揺しているのが手にとるようにわかる。
「早く探さねーと!」
ヴァンクールも声を張り上げた。
「あっ!」
その瞬間、またキセキが声を上げた。
ーーーー
サギリは近づいてくる黒煙に目を瞑った。
(ラインッ…!)
「こらー!」
その瞬間、上の階から聞きなれた陽気なティアラの声が聞こえてサギリは目を開いた。
「はっ?」
先ほど自分が降りてきた牢屋の穴からティアラが降りてきた。
ゴーストはティアラの方を見ている。
ティアラは
「サギリンは殺しちゃダメだって!
私言った…!…言ってないか!」
とゴーストを叩いて笑っている。
「サギリン。
ゴーストは他の実験とは違って、私だけの研究成果。
ゴーストは私の言うことだけ聞くのよ。」
とティアラはゴーストに抱きつきながら笑った。
サギリは眉間にシワを寄せて、ティアラとゴーストを睨み付けた。
「おぉ怖い。
サギリンはお友達だから。
殺したくないの。」
そう言ってゴーストの背中を押すと、ゴーストはゆっくりと元来た穴に降りていく。
「サギリン。私、セイカの所に帰るよ。
屋上にヘリコプターがあるよ。」
そう言うなり、ティアラも穴に降りていった。
やはり、ティアラもセイカの仲間だった。
セイカとゴーストが仲間ということが仮定出来る。
サギリは未だに眉間にシワを寄せながら、自分の浅はかな行動を悔やんだのだった。
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