魔核

「俺を殺すのか…」
銃が口内に突きつけられているのにもかかわらず、サラバは無理やり笑った。

ヴァンクールは眉間にシワをよせて、軽蔑するような目でサラバをみている。

「そんな目で見るな。
あ、そうだ。いいこと教えてやるよ。」
銃のせいでサラバの声は聞こえにくかったから、ヴァンクールは少しだけ銃を引いた。

「このフロアの一番下には、昔何があったか知ってるか?
この下全部が被験者カプセルじゃないんだぜ。」
ヴァンクールは少し眉を上げた。

「今は空っぽだがな、知ってるか?魔核ってのを。」

その一瞬あと、明らかにヴァンクールの表情が変わった。
目を見開いて、階段の下を覗こうと首を伸ばす。
「本当にこの下にあったのか?」
「あぁ。あった。」
ヴァンクールの問いに、間をあけずにサラバは真顔で答えた。

ヴァンクールはその答えを嘘と疑うこともできずに、ただ長い睫毛を伏せる。
「なあ、ここにないなら…どこにある。」
ヴァンクールは銃にもう一度力をいれてサラバを脅してみる。
…いや、もうサラバに脅しなんて通用しないだろう。

「ははは…」
すると急にサラバが笑いだした。
「なんだよ。」
ヴァンクールの声はひどく低く、フロアに響く。

「カストレだよ!カストレに決まってんじゃんよ。」
「カストレ…
今もか…?今も、魔核がどこかにあんのかよ!」
ヴァンクールが急に怒鳴った。

サラバはその様子を笑いながら見つめては
「だってどこもなくなってないじゃん。」

そうだ。
(魔核は全てを滅ぼす為の兵器だもんな。)
ヴァンクールは下を向いて唇を噛む。

「まぁお前には関係ないだろ。
何にも守れやしないんだから。
あのバレンチアだってお前のせいでなくなったようなもんじゃねえか。
アルフレッドさんも可哀想だな。
結局、守ってきたヴァンクールもセイカに殺されるんだし、」
「黙れ。」
「お前はセイカの剣になるんだろ。
結局バレンチアを裏切ることになるんだな。」

ヴァンクールは無表情でサラバの喉に銃を突きつけた。

サラバはその状況でもまだ笑っている。生きようとする気はもうないのだろうか。
「マリちゃんの力をチクったのも俺だよー。
マリちゃんがアストラシア来たときに色々調べさせてもらった。
正直、俺が殺したようなもんだよな。」


「ってかなんで早く死ななかったの。
俺、忠告したよね。
お前が早く死んどけば他の犠牲はなかったんだよ。」
ヴァンクールは虚ろな目で右手に力を入れた。


「なんだ…結局一緒じゃねえか。
俺もお前もセイカも。」


ーーーー

アシェルとキセキはエレベーターから降りた。

「いかにもって感じだな。」
キセキは嫌そうにフロアに一歩踏み出した。
アシェルもエレベーターから降りて、何もない通路を異様な雰囲気を放っている扉に向かって歩く。

しかしキセキが扉を開けた瞬間だった。


パンッ


冷たく重たい音が静かな暗闇に強く響いた。


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あきゅろす。
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