34階

サラバとヴァンクールは研究室を出ると、また先ほどのエレベーターに乗り込んだ。

「次は"34"階だな。」
サラバはなぜか楽しそうにエレベーターのボタンを押す。

ヴァンクールはじっとエレベーターのボタンを見つめていた。

これより上の階がほとんど研究室だと考えると胸が痛む。


「おい。何ボーッとしてんだ。
降りるぞ。」

ヴァンクールははっとして、そのまま同時に強く引かれた鎖に身をまかせた。

「…。」
エレベーターを降りると目の前にはまた、研究室の扉と同じような重い扉がある。

この扉を開ければ何があるのか…嫌でも想像してしまう。

サラバは扉を押した。

ーーーー

「ようこそ。」
サラバは楽しそうにヴァンクールを扉の向こうへ迎い入れた。

「おまっ…、これ…」

ヴァンクールは目の前の光景に息をのんだ。

扉をぬけると、そこは今までとは違う世界。

すぐ目の前に金属の階段があり、壁際に沿って円を描きながら下に続いている。

一番下は何階なのだろう。真っ暗でよく見えないが、10階分ほどあるだろうか…。

ヴァンクールが色々考えていると、サラバに
「降りるぞ」
と鎖を引かれた。

ヴァンクールが辺りを見回して一番驚いたことは、階段の壁側にびっしりと先ほどの研究室と同じカプセルがうめられていることだった。

しかも…
「サラバ…。こいつら人間なんじゃ。」
ヴァンクールがカプセルの中身を見て体を震わせた。
「そうだ。
これ全部、遺伝子だけ入れた人間。死ねば化け物になるよ。」
サラバが笑って、カプセルをとんとんと叩く。

カツカツ…

金属の音が虚しく、暗闇に響く。


どこを見ても人間。
「サラバはこの人たちをどうすんだよ。」
ヴァンクールがサラバに不意に大声を上げた。

サラバはその声にピタリと止まる。

「これだけいても、成功するのは数人だけさ。
他は失敗。勝手に仲間で殺しあう。」
ヴァンクールは唇を咬んで拳を強く握った。

「見せてやろうか?」
急にサラバが振りかえってカプセルについているボタンを押した。
ヴァンクールははっとして、
「や、やめろ!」
サラバの腕を押さえる。

しかし、サラバは鎖を離してヴァンクールを突き飛ばし、
ガッ
ヴァンクールは階段の柵に頭をぶつけてしまった。

「痛ッ…!」

ヴァンクールは顔をしかめながらサラバを見ると、カプセルが空いていて、なかにいた人間は狭いカプセルの最奥でサラバを見て、震えていた。

(起きてるじゃねえか!)
ヴァンクールは手錠を思い切り柵にぶつけた。
もちろん、本人の腕が一番痛い。
なんとか手錠は外れたが、
サラバはヴァンクールに見向きもしないで腰から拳銃を取りだし、怯えている人に向けた。

「サラバ!やめろ!」



パンッ




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