こんなものを、

「よっしゃ。」
キセキがモニターの前の座席から立ち上がる。

「何階にいこうか…」
アシェルが気の毒そうに倒れている管理人を見ながら言った。

キセキもその管理人を見ながら
「以前俺は20階まで見たんだ。
この管理室にも20階までしかなかった。」
アシェルはその言葉に目を丸くした。

「えっ?
確実に20階からヤバいじゃねえか…。
ならヴァンクールとサギリもきっと上か…。」
キセキはうなずいた。

「じゃあいくか。」

次は未知の20階〜


ーーーー


「っ結構…しんどいな…。」
16階の階段の踊り場。
すでにはじめの軽快さは全くなかった。

「まだ20歳なのに。」
少し悲しそうにしているキセキ。

そのままゆっくりと階段をのぼり、ちょうど息も整ってきたころ。

「20階…。」
明らかに雰囲気が変わった。

19階から上の階段には電気すらついていない。
そして、立ち入り禁止のロープが張り巡らされていた。

「社員すら立ち入り禁止なのかよ。」
キセキはどこか面白そうな声をあげた。
明らかにヤバい雰囲気がする。

「行くぞ。」
アシェルはロープを跨ぐ。
キセキもそれに続いた。

ほとんど密室で電気がついていないために、異様な空気を放っている。
これより上に何があるのか。

『これでファルクスカンパニーが何を作っているのかわかるね。』
(何を見ても驚かんぞ。俺は…)

20階…
「はっ?」
先頭を行くアシェルはすっとんきょうな声をあげた。

「あっれえ?
ドアがないねー。」
キセキが目を丸くしながら口を歪ませて、苦笑いした。

今まで19階連続で扉があったはずだ。
その位置に扉がない。

「あ、上がるか。
明らかになんかあるよな、この階…」
アシェルはちょっと気持ち悪そうにしながら、次の階へと続く階段を指さした。
「りょーかい!」

ーーーー

しかし、その扉がないという光景が34階まで続いたのだ。

35階…

「やっとだ。
この階から下に行けんのかな。」
キセキが階段を見てため息をついた。

「変な構造。」

するとまたキセキがまたかんざしを取り出して、ドアの鍵穴に突き刺した。

カチッ
「はい。開いたー。」

2人は息をのんでゆっくり扉を開けた。

ーーーー

ガチャッ

…内装は他の階とあまり変わらない。

しかし、電気がついていない。

「こわっ…」
キセキはアシェルに身を寄せるようにしながら、にっこり笑った。

「階段…さがすか。」
アシェルはキセキに呟く。

どこ階でも共通の長い廊下。
アシェルが一応先頭に立って、心刀フレイルを構えている。


廊下のかど。
廊下の途中には全く扉がなかった。

ーーーー

アシェルが誰もいないか確認するためにかどから向こうを覗いた。

その時だった
「うわっ!」
アシェルが急になかなか大きい声で叫んだと思うと、そのまま、思い切り心刀でキセキの死角である、曲がり角の向こうの"何か"に斬りかかったのだ。

わずかに血が飛んだのが見えた。

キセキから見ると、全く何があったのかわからなかったが、とにかく何かがいることにはかわりない。

「大丈夫。一匹だ。」

("一匹"?)
その変わった言い方にキセキは顔をしかめる。

キセキは、そのまま廊下を曲がる。

「うっ、」
キセキはアシェルによって斬られた者を凝視した。

それは"人"ではなかった。
それは
「化け物。」
キセキにはそうにしか見えなかった。

毛まみれの体。
長い耳。
人間と同じような体。

うつぶせで倒れているために顔は見えなかったが。
「ファルクスカンパニーがこんなもの作ってたのか…?」
キセキの体を恐怖感が襲う。

『キセキ…。この子たちを殺してあげて。』

(…わかってる。
如月(きさらぎ)。)
キセキはゆっくり目を閉じた。



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あきゅろす。
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