重い手錠

「んっ。」
ひどい頭痛に襲われた。

ゆっくりと目を開くと、顔をしかめるほどに眩しかった。

ヴァンクールは広い何もない空間にいる。
(どこだ?)
『ん…わかんないや。』
心刀であるマリもヴァンクールと同時に目覚めるのでヴァンクールの問いには答えられなかった。


ヴァンクールが立ち上がろうと地面に手を着くと、
ガチャッ

「あっ。」
手首に鈍い痛みが走る。

ヴァンクールがチラリと手首を見ると、見たことのある手錠がかかっていた。
(これは…。)
手錠には謎の字が刻み込まれている。

『あっ!ヴァンがカストレに捕まった時のやつ。』
(あー…。)
ヴァンクールは目を細めた。
ー全く能力、心刀が使えなくなる…。

「厄介だな…」
この手錠のお陰でこの場から無理矢理抜け出すことは難しくなった。

ヴァンクールは全く動けないまま、あぐらをかいてため息をつき、
「すぅっ…」
そのまま息を大きくすった。

「サラバーー!
そこにいんだろ!」
あまり大声の出さないヴァンクールが自分でも驚くほどの声。

その時、
「ハッハッハッ。」
ヴァンクールから一番遠い広い部屋の壁が開いた。

「サラバ!」
サラバだ。
とても愉快そうに手を叩いて笑っている。

「おいおい。
これなんだよ。
サギリはどこにいんだ。」
サラバを睨み付けヴァンクールが低い声で唸った。
サラバはポカンというような顔をして、
「口が悪いね〜。ヴァンは。
まぁ、お前にはつくづく腹がたってるから、セイカが来るまで面白い遊びをしようと思って。」

「セイカだと…?」
ヴァンクールは片方の眉をあげる。
「お前、セイカのなんなんだ…。」
すると、サラバににっこり笑って
「セイカは仲間だよ。」

ヴァンクールの目が見開いた。
「じゃあ、この会社は…。」
サラバはセイカが来るまでここでヴァンクールを監禁するつもりなのだ。

「別に会社は関係ないよ。
セイカは1週間後に迎えにくるから。」

「これをつくってるのは、この会社だよな。」
ヴァンクールは手錠を出来るだけ上げて見せた。

「まあね。」
サラバはそれだけ答えると、
急にヴァンクールの前髪をガッと掴みあげた。

「いてっ!」
ヴァンクールは自然とサラバと目があう。

「あの、アシェルってのは何者なんだ?
セイカがびっくりしてたぞ。
『私の力を消すなんて。もしかすると四大能力の一つなのか。』って。」
(セイカも月の力の能力は知らんのか…。
まぁ、セイカがアシェルを狙うのも時間の問題か…。)

サラバの言葉を無視して、サラバを凝視していた瞬間。

ガッ。

左目の横だ。
サラバに思い切り蹴られた。
「ってぇな!」
ヴァンクールは傷口を押さえることが出来ずに、サラバを睨み付けた。
左目の横がズキズキと痛む。

「話を聞けよ。」
サラバの陽気な顔が変わった。
「知るかっ!アシェルの力は知らねえよ!」
ヴァンクールがギッと睨み付けると、

ガンッ

今度は腹だ。
思い切り蹴られた。
「っ…!」

「わかったわかった。
どうせお前は死んでも言わんだろう。
本人に直接聞くか〜。」

…(アシェル来てんのか…。)

「そうだ。ヴァン!
いいものを見せてやろうか…。今、ファルクスカンパニーで作ってるやつだ。」
サラバはにっこり笑った。


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