「んっ…」
どこだ?ここは。

アシェルが辺りを見回すと、回りは白い壁であった。
「ベッド…?」
そこは病室のベッドである。
隣にちらりと見えるベッドにはヒロが眠っていた。

きっと知らないうちに待合室で眠ってしまっていたのだろう。

アシェルはゆっくりとベッドから起き上がって、入り口へと向かう。
(あっ…シエルも寝てる。)

入り口の一番近くのベッドにシエルが眠っていた。

アシェルはニッコリ微笑むと病室の入り口の扉を開けた。

ーーーー


アシェルは薄暗い廊下を一人で歩いていた。

もう真夜中なのだろう。
明かりは緑色の非常ランプのみと言ってもよい。

『アシェル。どこ行くんだい?』
フレイルは、ただ前に進んでいるアシェルに話しかける。

(待たなくちゃな。)
それだけ呟くと、やっと病院の待合室に着いた。

アシェルは薄緑の淡い光を頼りに、今朝座っていた座席に座る。


アシェルはずっと、座って待っていた。

ーーーー


数時間経っただろうか…
しかし、院内は先ほどと変わらず静かである。

アシェルが座席2つ分を使って足を広げてもたれ掛かっているときであった。

無音が続いていたが、不意にカツカツッとヒールの音が近づいてくる。

アシェルはバッと起き上がり、小走りで足音に近づくと、
「あっ。起きていらっしゃいましたか。
少々お待ちください。」
ナースであった。
なにかアシェルに用があったのだろう。

半ば強引に話を進められ、行ってしまったから、「ヴァンクールはどうなのか?」ということを聞けなかった。

ーーーー

数分後…

先ほどの廊下でアシェルが突っ立っていると、

カツカツと先ほどのヒールの音と、ほぼ無音に近いが、
「ヴァンクール…」


廊下の向こうの方に人影が見える。
「ヴァンクール!」

アシェルは夢中で走った。
「心配かけてごめん。」
目の前にナースと一緒に立っているのは正真正銘ヴァンクールであった。

しかし、
「それ…」
アシェルはヴァンクールの顔をまじまじと見つめる。

そう、違和感があった。
「うん。これは仕方ないよ。血の色だよ。」
ヴァンクールは自分の目を指さした。

目はちゃんと開いている。アシェルの目をとらえて話をしているから、目は見えているようだ。

しかし前までの優しいスカイブルーではない、…目が赤いのだ。

この暗闇のなか、非常ランプの他に唯一光を持っているようだった。

そして、
『エヴァ…』
フレイルに見せてもらったセイカの息子エヴァ。

その瞳も深い深い赤だった。

アシェルにはエヴァの瞳と関係がないように思えなかった。


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