軌跡です!

するとサギリの驚いた顔の前にビシッと指がおろされた。

「違いますよ!サギリさん。
発音は"奇跡"であってます。が…!漢字は軌跡です。」
「すまん。
音じゃあ全くわからない。」
サギリが呆れたような顔を軌跡に向けると、

「以前、俺は"奇跡が起こる"の奇跡でした。しかあ〜し!俺は改名したのです。
俺は奇跡ということばが大嫌い。
だから"軌跡を描く"の軌跡になりました。」
いいおえたあと軌跡は一人で納得しているように見えた。

「ところで聞いていたか?
お前が情報部なのか?」
サギリが目を細めて軌跡を見つめる。

「それは本当ですね。」
と軌跡は誇らしげにうんうんと頷く。

するとサギリは驚いた顔をして
「つけられていたことを全く知らなかった。」
軌跡はその言葉に目を泳がせてから、

「ついてってませんよ。」「?」

するとランナが
「そういう力を持ってるの?」
と尋ねる。
「うん。まあそうかな。
俺は視界を奪えるんだ。」
サギリは肩を一瞬跳ねさせた。
「そんな力が…?」
軌跡は鼻の下を擦ってから右目にかかっている眼帯を指さした。

「今、俺はサギリさんと目が合ってますよね。」
サギリは静かに頷く。

軌跡はそれを見るなり、目を瞑って右目の眼帯を外した。

「?」
サギリとランナは目を見開いたまま首をかしげる。
眼帯の下は全く変わらないのだ。
別に怪我をしているわけでもなく、目の色が違う訳でもない。

軌跡はただ左目を閉じて、右目だけで前を見据えていた。

「どういうことだ?」
サギリが尋ねると

「…今俺は自分を見ています。
サギリさんの視界を見ているんです。」
「えっ!?」
サギリはかなり大きい声を出した。

「もうあなたの視界は俺に奪われているのです。
俺の力は目が合うことで相手の視界を借りることができる。
しかも…、サギリさん。緑君と目をあわせて。」

ランナはピクッと眉間にシワを寄せながらサギリと視線を合わせる。
「はい。これでもう俺の視界は緑君のになりました。」

そう。軌跡の力はこうやって連鎖させていくことが可能なのだ。
「知らなかった…。
すごいじゃないか!」
サギリが嬉しそうに手を合わせる。

「まあ、欠点もあるんですけどね。」
軌跡はニコニコしながら椎葉の隣に腰掛けた。

「サギリ、アストラシアに行くんじゃろ。」
不意に椎葉が尋ねた。

サギリが真剣な眼差しで頷くと
「ならば、軌跡を連れていきなさい。
アストラシアの連中は聞く耳を持ってくれないだろう。
もし、攻撃されたら大変じゃろ。」
そのまま椎葉はランナへと視線を移す。

「君たちも誰かついて行くといい。
アストラシアとカストレは何かと繋がっておる。
アストラシアの人間なら、カストレに入る方法を知っておるかもしれん。」

「ヴァンクールとアシェル以外の誰かでいいですか。」
ランナが尋ねると、
「あの2人に行かせるのは危険じゃかならな。」
椎葉は頷いた。


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