最後の呪い

「ヴァン。」
ランナは額に汗をうかべながら、唖然と見つめていた。
正直どうすればいいかわからないなだ。
ヴァンクールは太陽の炎をまとっているから近づこうにも近づけない。

その時、
「ヴァンクール!」
アシェルがランナの部屋へと駆け込んで来た。

「アシェル〜」
シエルが心配そうにアシェルに駆け寄る。

「ヴァンクール…。」
アシェルはヴァンクールの様子を見つめる。
(ヴァンクール、何を見てるんだ…。)
『アシェル…
この状況を乗り越えられることができるのは君だけだよ。』

アシェルはうなずいて、ヴァンクールに近づく。
「アシェル?
危ないよ!」

アシェルは目を瞑ってヴァンクールの額に手を近づける。


その瞬間ヴァンクールの体の周りの炎がブワッとアシェルを避ける。
そのままアシェルはヴァンクールの額に自身の額をつけた。

「えっ!なにっ?」

その瞬間アシェルたちの周りをまばゆい光がつつんだ。


光がなくなったあと、ゆっくりとアシェルが体を起こす。
「フレイルに任せよう。」
しかし、周りには全く理解されていなかった。

ーーーー


フレイルは真っ白、しかし寂しい空間に立っていた。
ここはヴァンクールの心の中、フレイルの心の力を使って入り込んでいる。
フレイルはこの力を使って、今までは"心の支配"をしてきていた。

そして心は人によって様々で、色も広さも…今まで様々な心を見てきた。

ゆっくりと辺りを見回しながら歩いていくと、向こうの方に赤がちらつく。
(ヴァン?)

フレイルが小走りで近づくうちに、
(違う。)
ヴァンクールと同じ赤い髪の青年、しかし髪が一部だけ長くて、座っているから地面に髪がついていた。

「いらっしゃい。」
青年はくるりとフレイルの方へと向くと、にっこり笑った。
目の色も違う。
ヴァンクールはスカイブルー、この青年は真っ赤だ。

「君は誰だ?
ここで何をしている。」
フレイルが眉間にシワをよせながら睨み付けると、青年は急に
「はははっ…!」
と笑いだした。

フレイルは不快になりながら黙って青年を見下ろしている。
「俺は"最後の呪い"かな。ヴァンクールの幸せをとことん奪いに来ているというか…
でも俺にはそんな気はさらさらないけど。」

「君はセイカの何なんだ。」
フレイルがその言葉を放った瞬間、青年は急に笑うのをやめた。

「前の太陽の力の保持者。…セイカの心刀。それからセイカの息子。
"エヴァ"だよ。」
その時フレイルの頭にミカミでアシェルたちがエージェントと話をしていたことがよぎった。

「セイカの心刀は折られたんじゃ…
しかも太陽の力って。」
そう、心刀を折られた時点でエヴァの命は終わっているはずなのだ。

「じゃあまさか…」
エヴァはまたにっこり笑う。
「そうだ。
セイカは折られる前に太陽に願い事をしたんだ。
"エヴァの心をこの地に止めて"って。
結果俺はなんでかこのタイミングで目が覚めたんだ。
太陽の力が最後のセイカの願いをどうとったのかは知らないけど。」
と目は笑っていないが口元だけ笑って見せた。

「俺は起きてる間、ヴァンクールの心と体を支配できちゃうわけだ。」

「でも、アシェルと僕がいる。」
エヴァは目を伏せて嫌な顔をした。
「だよな〜
アシェルは本当に邪魔だ。」

フレイルは心を操ることができる。
だから今起きているエヴァの心を眠らせることも容易なのだ。


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