今度はなに!

ヴァンクールがアシェルに導かれて腰をおろしたのは、ランナのベッドである。

(汚れるな。)
ヴァンクールはベッドの心配をしながらゆっくりと横たわった。

「ちょっと待ってろ。」
そう言ってパタパタとアシェルが部屋から出ていってしまう。

ヴァンクールはセイカに刺されたレイピアの傷を押さえながら、ふうと息を吐いた。
恐ろしい程に安心している。

すると足音が遠くから聞こえてきた。
軽い早い足音。
(ランナか。)

足音で判別出来るようになっていることを今さらに気づく。

「ヴァン!
ヴァンー!」
ランナは涙声である。
「大丈夫だよ。」
ヴァンクールは優しい声で呟いた。

「ミカミについたら目が見えるようにはなるから、」
ランナがまたまた余裕のない声色で大きい声をだす。

「そっか…」
ヴァンクールはもし目までなおせないなら太陽の力を使おうと思っていた。

「ヴァン。ミカミにつくまで、痛み止と睡眠薬打つから。」
ランナはそういうと、たぶん痛み止を打った。
ランナの腕はたしかだから、注射器の痛みすらあまりないのだ。
「じゃあお休み。
誰かは近くにいるからね。」
ランナは涙声で睡眠薬を打った。

ヴァンクールにはすぐに眠気が訪れた。


ーーーー


「ヴァンが眠ったからかわるよ。サギリさんは操縦できるんだね。
ヒロが疲れて眠っちゃったし、助かりました。」
ランナは操縦室の扉を音もなく閉めながらいい放った。

「ああ。頼むよ。」
さっきまでランナの代わりに飛行船を操縦していたのはサギリだった。

ランナは「よいしょ。」と座席に座る。

またガクンと機体が揺れたかと思うと、スピードメーターは先ほどの倍ほどのスピードを示している。

「サギリさんは、これからどうするの?
アシェルから話は聞いてたから。」
ランナはサギリの方を見て微笑んだ。

サギリはそれに答えるように口角をあげて笑うと
「私はアストラシアのサラバとの契約を破棄しにいこうと思う。」
と答えた。

ランナは「そっか」と小さく呟くと、
「これから僕らはどうしたらいいんだろうね。」
と正面をみてまた小さく呟いた。

ヴァンクールの傷が癒えたあと…

…ヴァンクールに残された最低でも一週間。

その時
「誰か!」
とシエルの叫び声が船内に響いた。

ランナはびっくりしたように操縦席から飛び下りると部屋から出ていってしまった。

ーーーー


ランナが声のしたヴァンクールの寝ている自室に訪れると、

「うう…!」
ヴァンクールが苦しそうに唸りながら、体に太陽の炎を纏っていた。

色は薄い黄色。
部屋はそんなに広くないのだが、ランナたちには全く暑く感じないし、ベッドなどに燃え移っている様子もない。


とにかくヴァンクールは眉間にシワをよせて苦しそうに悶えていた。


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