ソルフレアからの脱出

「アシェルさん!
今から出来るだけ近づきます。」
ガコンッと飛行船の扉が開いて、ひょっこりとヒロが顔をだした。

アシェルは周りにあまり兵士がいないことを確認してから、後ろのヴァンクールを抱える。

シエルとサギリもヴァンクールとアシェルのもとに走ってきた。

周りの兵士たちも、観客たちも大きな飛行船を見て、ただ唖然としている。

「捕えろ!
ヴァンクールを捕えろ!」
マイクを通して男が叫ぶ。しかし、兵士たちは自分達よりも強すぎるアシェルたちに恐れをなしているのか、動こうとしない。


その時、その様子を見ていたヒロが機体から軽々と飛び降りてきた。

「ヒロっ?」
シエルが目を丸くして飛び降りてきたヒロを見つめる。

「いちいち機体を着陸させると、また上がるのに時間がかかるから。」
そういって手をさしのべた。

アシェルとシエルは大雨の中首をかしげる。

「じゃあ行きますよ。
俺の手を握ってください。」
その瞬間、サギリ以外が何を言っていることがわかる。

「わかった。」
シエルは微笑んでうなずくと安心してヒロの手を掴む。そしてヴァンクールの手もしっかり握る。

アシェルもその上からヒロの手に自分の手をのせた。

アシェルは乗せた瞬間、ちらりと2人の騎士をみた。

セイカが心刀であるヴァンクールを騎士に殺させないため、シエルたちにヴァンクールを守らせるために、騎士には致命傷を、シエルとサギリには軽い怪我を負わせたのだろう。

「アシェル?」
シエルが首を傾げて尋ねた。
「うん。大丈夫。」
アシェルは騎士から視線をそらしてうなずく。

「サギリ!あなたも行くよ!」
シエルが叫ぶと、隣で見ていたサギリが驚いた。
「いいのか?」
「いいの!」

それをみて少し嬉しそうにサギリは手を乗せた。


「早く!」
また、兵士たちをしきしている男性の声が轟く。
早くヴァンクールを捕まえないと…世界の危機につながるかもしれない

これからのカストレはどうなるのだろう。

セイカのことをどうするのか、騎士はヴァンクールを狙うのか、本当に何も知らない国民はどうなるのか。国王は、セイカは…

そう考えているうちにアシェルの体は光った。


ーーーー

「あっ…」
周りの景色が一瞬で船内に変わる。

「はぁはぁ。」
隣ではヒロが胸を押さえて荒い息をしていた。

「大丈夫!?」
シエルが背中をさすってさけぶ。
『そりゃ、この人数を飛ばしたらね』
フレイルが心配そうに呟いた。

その瞬間、機体が大きく揺れた。

「すごいスピードだな。」
サギリは感心したように、辺りをキョロキョロしている。

「ヴァンクールをランナの部屋に!」
シエルがアシェルの肩を叩く。アシェルがうなずいてヴァンクールの肩を触った時
「アシェル…」
不意にヴァンクールが小さく呟いた。

「ん?」
「体がおかしい。
なんか頭の中に…」

アシェルはそれは傷のせいだと思ったから、そのまま聞き流して応急措置のため急いでランナの部屋に向かった。


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