最後の希望

「早く!」
ランナが焦りながら機体を動かす準備をしている。

「浮いた!」

ーーーー

(セイカってなんなんだよ!)
アシェルがヴァンクールの元へ猛進している時、アシェルの目にはセイカによって倒された、仲間や騎士がうつった。

そしてヴァンクールの前に立っているセイカ…

アシェルは心刀を汗ばんだ両手で握っていた。
このまま突き刺さればいい。
と思うが、そんなわけにもいかない。

客席は興奮状態で声をあげているいのはわかる。
リングがふるえているから…
周りをちらりと見ると、リングの周りをたくさんの武装した戦士が囲んでいた。

落ち着いた時に、全員捕まえるつもりなのか、


アシェルが前を向きなおした瞬間に
バチッとヴァンクールと目があった。
ヴァンクールの目だけはまだ煌めいている。

セイカとの距離が近づいてきているのに、誰からの襲撃もない。
3姉妹も見ているだけなのだろう。


セイカとの距離は数メートル。
そこで目の前の2人がやっと動いた。
(はっ。)

その瞬間。
アシェルの体は浮いた。
そして、カンッ
と金属の音がして、目の前にセイカが立っていた。

『アシェル!浮いてる。』
フレイルが叫ぶ。
その声にハッとして、目の前のセイカを見ると、セイカの持っている心刀の一つであるレイピアが真っ二つに折れていた。
そして自身を何かが包んでいることに気がつく。
…バリアだろうか。

アシェルが月の力で周りの力を消そうとした時、

『アシェル!ダメだ。』
フレイルじゃない。
「ヴァンクール…?」

頭の中に直接ヴァンクールの声が語りかけてきた。
『そのバリアはセイカでも壊せない。さっきのレイピアはエルの力。能力封の力だ。』
(でも…)

『お前が死ねば、世界は滅びる。こんなところで死んでくれるな。』
アシェルは目を大きくしながらセイカを見る。
セイカは目の前にいるのだが、ヴァンクールの方を見ていた。
もう諦めたのだろうか。

『アシェルの力は太陽の力の対なんだ。
どちらかが失われると、世界の均衡は保てない。
ましてや、アシェルがセイカの心刀になんてなってしまえば、これこそ破滅だ。』
アシェルはセイカの背中を見つめる。
その背中はだんだんと遠くなる。
(それで、ヴァンクールが心刀になるのを見ていろ。っていうのか?)

『これは今までセイカに殺された人々が残した最後の希望なんだ。
俺たちが出会ったのは神様の最後のハンデなんだよ!

セイカはもう人の強さを越えてしまった…』

(それでお前が死ぬのかよ…。)
アシェルは拳を強く握った。
『アシェル。まだ死ねないよ。俺は…』

その瞬間だった。
セイカがヴァンクールの手首をつかんだ。

ヴァンクールの目は芯を持って煌めいている。



アシェルの目の前が目映く光って真っ白になった。



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あきゅろす。
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