瞳の紅

セイカの顔つきが変わった。

…本当にそれと同時だった。

(っ!)
ウェルテスは周りの異常に気付く。
それはウェルテスの計測の力を通してだ。

頭の中に莫大な情報が急に流れ込んで来た。

(なんだっ!
…セイカじゃない)

ウェルテスはバッと情報の発生源を見つめた。

その目線の先には
(アシェル…?)
アシェルはメノリアと対峙しているだけだ。
それといって、すごい力を使っているようには見えない。
しかし、頭の中の数値はしっかりとアシェルを示していた。

しかし眉間にシワをよせて、アシェルを見ていた時、後方から禍々しい気配を感じ瞬時に拳を構える。

「っ!」
ウェルテスは腕や頭の毛が逆立つほどに重い一撃を生まれて初めて受けた。

…セイカの拳を両手を広げて支えていて、腕がじんじんと痺れ、悲鳴をあげている。

「よそ見をするなバカ。」
そのままセイカが右足を少しひいた。
ウェルテスはぞっとして、
セイカの拳を軸にふわりとセイカの上を飛び越え、そのまま後ろに着地し、後ろから蹴り飛ばそうとした。

しかし、セイカも同時に後ろを向いていて、思い切り腹を突かれた。

痛みを感じる前に、すごい勢いでリングの障壁に激突する。
「ぐっ!」
その瞬間にウェルテスの体を痛みが襲った。

(たたないと…)

ーーーー


「シエル!」
シエルは風を纏ったのとほぼ同時に、少し離れているがアシェルに名前を呼ばれた。

アシェルの方をチラリと見ると、アシェルは戦っているはずのメノリアと少し離れていた。

目が合った瞬間にアシェルがシエルの方へ走ってくる。
メノリアは眉間にシワをよせたまま、その様子を睨んでいた。

「どしたの。
まだメノリア元気だけど。」
するとアシェルは一度帽子を被り直しているアンジェリカを見てから、奥で倒れているヴァンクールを見た。

「茶髪も限界だ。
シエルはサギリとヴァンクールを助けに行け。
俺は3人を止める。」
シエルはその言葉に耳を疑った。が、アシェルの落ち着いた瞳を見て、静かにうなずいた。

シエルは一目散にサギリの方へ向かう。
「えっ!?
なに!?」
アンジェリカは目をまん丸にして後を追おうとする。

しかし、
「行かせねえ。」

アンジェリカの前にアシェルが立ちはだかった。

アンジェリカはびっくりしてビー玉程度の爆弾を構える。

その時メノリアがアンジェリカの方へ走った。
そして
「アンジェリカ。
この銀髪に触れられれば私たちは死ぬ。」
と、肩をたたく。

「はぁっ?
メノリア本当?」
そう言って、アンジェリカはアシェルに向かって爆弾を投げつけてきた。

アシェルはもう能力がなんとなくバレているので、右手をさしだして爆弾を消す。

そのまま、ヴァンクールの方へ行かせないように、ヴァンクールの方を背にする。


その時、隣をシエルとサギリが走り抜ける。
アシェルはすれ違いざまにシエルの肩を叩き
「シエル、サギリ。ヴァンクールをたのむ。」
「まかせて!」

アシェルは前方の3人に心刀フレイルを向けた。
アシェルの瞳は紅く、火を燈しているようだった。




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