騎士対決

ウェルテスは破壊した結界の中へ飛び込んだ。
それを追ってイクサも飛び込む。

「あちゃあ。
早かったか。」
セイカが立ち止まって、しかしウェルテスたちを振り向く訳ではなく、ぶっきらぼうにいいはなった。


それをいいおえた瞬間…。ウェルテスのきつい飛び蹴りがセイカをとらえた。

(よしっ!)
あまりにも速い蹴りだったので、そのようすを見ていた全員がそう思った。

しかし、蹴った本人は
「チッ!」

そう。ウェルテスには蹴ったように見えても、蹴った感触がなかった。

その時
「おぉっ!」
と観客席が唸った。
ウェルテスの蹴りが入った位置にはもうセイカはいなかったからだ。

ウェルテスも地面に着地した瞬間に腰を低く構える。

そのほんの一瞬後だ。
ヴァンクールの元へとあとほんのちょっとという位置にいたイクサが
「グッ!」
と低いくぐもった声をあげたのだ。

ウェルテスはその声を聞いてイクサを見るとすでにイクサの体は地面に横たわっている。
「イクサ!」
「セイカは力を使ってるわ!」
イクサが重い体を持ち上げて叫ぶ。

ウェルテスはすかさず計測の力を発動させて、リング上を探した。
もしかすると何か力を使っているのかもしれない。



すると、何もない空中の一点に数値が表示されていて、だんだんと近づいてきている。

(あれか!)
その表示された数値だけに意識し、右足を後ろに下げてから思い切り空中の一点目掛けて氷弾を蹴り飛ばした。

顔の大きさ程の氷弾はその一点目掛けて一直線に飛んでいく。

ガシャンッ
バンッ

ウェルテスが(当たったな)と思った瞬間、氷の砕ける音と何かが弾けるような音がほぼ同時になった。

「お前ー!」
すると空中の氷をはねのけて、セイカがすごいスピードで拳を構えながらウェルテスに向かって急降下してくる。

(バリアの力の応用だな。)
ウェルテスはギリギリの所でセイカをよけたあと、そのままセイカを殴ろうとしたが、

ドンッ

セイカがそのままスピードを殺すことなく、リングに突っ込んだことでその風圧でなぐれなかった。

セイカはそのすぐあとに右手を軸にしてバック転で起き上がって、その勢いでウェルテスの顔を狙う。

ウェルテスもすかさずパンチを繰り出した。

ゴッ

何か固いものがぶつかる音がした。

「おぉ!あれみろ!」
中年の観客が指さした先には、拳同士を打ち付けたセイカとウェルテスの姿だった。

その様子がモニターに写し出されているが、両の手からは血が滲んでいる。

ウェルテスはわざと顔を狙わずに、拳を狙ったのだ。
正直、パンチの出がセイカの方がはやかった。
だから、遅れて顔に放っても先に顔を殴られてしまう…。
だからウェルテスは相討ちを選んだ。

そのあとすぐに離れ、


「なんだよ。」
ウェルテスがセイカを睨み付けた。

するとセイカは急に腹を押さえて笑いだす。

「あははははっ!」
正直誰が見ても気持ちいい笑いではない。

「なんだよっ!」

セイカは拳をブンブン振りながら
「いやあ…痛かった!
ちょっと強くなったんじゃない!?」

またウェルテスが睨んだ瞬間、

ピシャリとセイカの笑いがおさまった。

そして、
「ボッコボコにしてやるよ。」


その場の空気が変わった。

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