正体

「あら、どこも騒がしくなってきたわね。私たちもそろそろ始めないと。」
サギリと対立しているのは、紫の髪のなぜか着物を着たセクシーな女性。
フレデリカである。

フレデリカはどこか余裕そうな顔(もともとこういうような顔なのかもしれない)をして、サギリに向かって自らの武器である美しい槍をふり下ろした。

サギリもその好戦的な様子を見て手裏剣を構える。

その瞬間、フレデリカがすごい勢いで走ってきた。

「はあ!」
ビュッと
槍をサギリに向かって突くがサギリはその槍をいとも簡単に横に避けてしまう。

そのままフレデリカの槍に手を添える。
その瞬間フレデリカの槍とサギリの添えてある手が
「バチィッ」と目映く光った。


「すごいわ。」
しかし、その声が聞こえたのはサギリよりも少し離れたところ。
サギリの電撃を軽々と避けたようだった。

サギリはギッとフレデリカを睨み付けるがフレデリカはフッと笑うだけだ。

「もっと、私を楽しませてくれないか?」
その一言がサギリを闘志を燃やした。

サギリは右手にどこからか、素早くナイフを握りしめる。
そう。この前の試合でヴァンクールからもらったラインのナイフだ。

サギリはもう一度まじまじとそのナイフを見つめる。
たいした装飾などなはないバタフライナイフ。
しかし、刃は薄く、刃先は本当に鋭くて手入れがよく施されているのがわかる。
(これで…)

サギリはナイフを握り直し、フレデリカへと向けた。

ーーーー

『アシェル!』
目の前がメノリアの大剣で陰った瞬間、アシェルはとっさに歯をくいしばり右腕で顔を隠した。

しかし、なぜか大剣の重みは来ないのでアシェルは後ろにバック転する。

メノリアを見ると、先ほどアシェルがいた位置よりも遠くにいる。
(なんで止めをささなかった…?)
すると、フレイルがとっさに
『ううん。
アシェルの力が怖いみたいだよ。』

よく見るとメノリアの右手に握られていた筈の大剣は砂を風にのせるように、粒子となって消えていっている。

その瞬間、アシェルは全てを理解した。
(俺の力…
月の力は能力を元に戻す。
ということは…
あの大剣は能力?)

「…。」
アシェルはメノリアの表情の変化にやっと気づいた。

もう今までの余裕の表情ではない。
…目を見開いて眉間にシワを寄せて。
(きっとそうだ。
あんなに俺から遠ざかる必要がどこにある。)


(メノリア自体が誰かの能力なんだ。
奴は自分が消えるのを恐れている。)


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あきゅろす。
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