フェアリー

シエルは同じ年くらいに見えるアンジェリカと対立していた。
アンジェリカの武器はシエルには見慣れない武器である。何か、指の間にビー玉のようなものを挟んでいる。
周りがとっくに戦闘をしているのに、この2人だけは全く動かない。

(ダメだ!未知の相手だからって、こんなんだから私はいつまでたっても。)
シエルは自分に強く言い聞かせると、心刀シャインを後ろに引いたままアンジェリカに向かって猛進した。

アンジェリカはその瞬間、指にずらりと挟んだ丸いものをシエルに投げた。
シエルはその得体も知れないものを一応かわす。

その丸いものはシエルが避けたあと、全く跳ねずに転がった。
『なんだろ。
切ったらどんな材質かわかるんだけど、』
(なにが起こるかわかんないから。)
そのままシエルはアンジェリカの首を狙い鎌を振った。
「きゃっ。」
アンジェリカは可愛い声を出してしゃがんで避ける。
シエルはそのまま空中で回転、方向転換してアンジェリカの後ろに着地した。
そのまま、鎌で突き刺そうとした時、
「遅い!」
と目の前に先ほどの丸い玉を投げられた。

ボムッ!

これは爆弾だったのだ。
一つ一つの威力は小さいものの、さすがに5個はきつい。
シエルは痛みに歯を食い縛りながら、後ろにジャンプする。

…そして、風を体にまとった。


ーーーー


(教えてください。
ヴァンクールを守るにはどうしたらいいですか?)
ウェルテスは心刀であるフェアリーに助けを求めていた。

フェアリーを散々利用してきて、何度か話しかけてももちろん今まで答えてくれたことはなかった。
今回も…
そう思っていた時、

本当に久しぶりに落ち着いた声色を聞いた。
『私の力を使いなさい。今回だけは貸してあげる。』
予想もしていなかったことに驚いたが、時間の余裕はない。
「はい。」
ウェルテスは目を瞑って、心の中にいるフェアリーを意識する。

すると暖かい光を自分の目に感じた。
目を開けると、ウェルテスの世界が変わった。
そして、もともと赤茶色のウェルテスの瞳は暖かいオレンジの光を放っている美しい黄色に変わった。
(これは…)
驚きの表情を隠せないウェルテスは変わった辺りの世界を見回した。

『そう、この力は計測の力。ある基準を決めた一定の物事を数値で表す。
あなたは今戦いのことを感じているから目の前の今発動している能力の強さとかがわかるわ。』

…そう、今ウェルテスの視界に写る世界はすべて能力値のレベルに基づいた数値に定められている。
「うっ!」
大量に流れ込む情報に、頭が痛い。

『バリアに集中しなさい。バリアだけの能力値を見なさい。』
言われた通りにウェルテスは光を放つ黄色い瞳をバリアに向け、バリアを破壊する方法だけを考えた。

すると、
(あっ!
ありました。周りよりも極端に低い能力値の部分が…)
ウェルテスにはバリアの中心に向かうにつれて、強度が落ちていることを確認できる。

『ええ。…弱点のない能力なんてないのよ。
じゃあ。とびきり大きいのを。』
「はい!」

ウェルテスは右足をゆっくり引いた。
そして、周りの水分を他の戦いに支障をきたさない程度に出来るだけ集める。

もともと青白い光を放っていたブーツが濃青色の光を放っている。

そして、自分の氷の力が最大まで引き出された瞬間に、思い切り右足を振った。

ギュンッ
と風を切る音が一瞬してから、
ドカンッ
とものすごい音をたててバリアにぶつかった。

それと同時にウェルテスの頭の中の、バリアに関する数値が完全になくなった。
それはバリアが破壊されたことを意味している。
ウェルテスは能力を計測の力を発動したまま、セイカの方へと走り出した。

(ありがとうございます!)

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あきゅろす。
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