近くにいるのに
アシェルには5人が飛び出した瞬間にセイカが笑ったように見えた。

そして、三姉妹の顔を見ないで、
「ねぇ。5人は任せるわ。」
と言いはなったのだ。

正直5人ともかなりなめられていると思った。


セイカはそのままゆっくりとまた、ヴァンクールの方へと歩き出す。

それを見たイクサとウェルテスはかなりの俊足でセイカの方へと突っ込んで行った。


「お前らは私に触れることも出来ない。」
そうセイカが振り返らずに言った瞬間、イクサとウェルテスが思い切り、なにか電気の壁にぶつかったように弾かれた。

「なんだっ!?」
「バリアかな…」
2人ともクルリと回転して着地する。

ウェルテスは体に異常がないか、右手を動かしてみる。
体の壁に当たった部分は少し痺れているだけで別になんともない。

しかし、このバリアに触れることは出来ない。

「ちょっと、」
そういって、イクサが右手を上げたと思うと、大きなミサイルが召喚される。

それをみた観客は歓声を上げた。
事情のよくわからない観客にとって、このよくわからない戦いはただの見せ物でしかないのだ。

ミサイルがかなり大きいからイクサがよろけながら撃つ。
ドンッ
ミサイルはバリアに直撃した。

…しかし、バリアは壊れない。
銃器専用の能力を持つイクサの召喚するミサイルなのだから、そこいらの軍事ミサイルよりは威力は高い筈だ。

つまり、力技では突破出来ないと言うこと…
「あたしはみんなを援護しながら考える。」

ウェルテスはゆっくりと歩いているセイカの背中を見つめながらうなずいた。
(どうしたら…。
ヴァンクールを助けるには、どうすればいいですか?)


ーーーー

ガキンッ!
そのころ、アシェルは赤毛の女"メノリア"と刃を交えていた。

メノリアの持っている武器は女性には似合わないような巨大な大剣であった。

しかも、それだけではなく力もかなり強い。
こちらの小さい短剣では少し不利かもしれない。

「お前らは騎士じゃないだろう?
ど…どうしてセイカについてんだよ。」

アシェルが恐る恐る口に出すと、メノリアは顔色すら変えずに黙っている。

その時だった。
メノリアより向こうにキラリと光った。
それは本当に一瞬でアシェルの方へと近づいてくる。
(っ!
ミサイルだと!?)
きっとイクサが放ったのだろう。

しかもイクサのほうを見れば、ここからでも見える巨大なバリアができている。
ウェルテスやイクサがセイカのところにいないというところから、あれがなくならないとヴァンクールを助けられないのだろう。
(俺の月の力でバリアをなくさないと、
でも、俺の力を騎士は知らないから…)
そう、アシェルが4大能力の月の力を持っていることはきっとフレイル、ヴァンクール、そしてエージェントしかいないのだ。
それが騎士や、ましてやセイカにバレることはあまりいいことではない。

しかし、今は能力がばれる、ばれないはアシェルにとってもうどうでもよかった。
とにかく、このメノリアをまかなければ…


イクサのミサイルがもうすぐ当たる…
というところで、メノリアは真上にジャンプした。
(やっぱり気づいていたのか…)
続いてミサイルをアシェルもジャンプしてかわす。


メノリアはほとんど同じ位置にいるアシェルを打ち落とそうと、大剣をおもいきり後ろに引いた。
アシェルはハッとして心刀フレイルを前に構えた。


ドンッ!

「うぁっ!」
なんとか斬撃は防いだものの、大剣の重量で打ち落とされてしまった。


激しく地面に体を打ち付けたアシェルは素早く体を起こす。

「ヤベッ!」
メノリアは大剣をアシェルめがけて突き刺そうと重力に任せて、かなり近くまで落ちてきていた。

ドンッ

間一髪で右横に回転して避けたあと、やられてばかりではいられない。
と、大剣を抜く動作をしているメノリアの喉めがけてアシェルは心刀フレイルを振った。


(よしっ!)
完全に当たり、肉の感触がした。
しかも当たったのは喉である。

「っ!?」
…しかし、メノリアは怪我をしていなかった。

そして何事もなかったように、驚いているアシェルの頭めがけて大剣を降り下ろした。



[*前へ][次へ#]

43/63ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!