業火の紅

ヤマトはというと、
ヴァンクールの翼を見て、目は驚いていて眉も下がっている。
しかし口だけ笑っていた。

「お前浮いてるのか…?」
ヤマトはヴァンクールの足元を指さす。


その言葉の直後にモニターの映像がヴァンクールの足元に切り替わった。

…たしかに、影が出来ている。

ヴァンクールの羽根を見るとゆっくりと動いていた。

その瞬間、
ヴァンクールの羽根の動きが少し早くなったと思ったら、
ブワッと
空高く飛び上がった。

それは誰もが息を飲む光景でとても神秘的であった。

ヤマトもそれを驚いた顔で見上げつつ、喜んでいるようにみえる。

ヴァンクールは空中でくるりと一回転すると、左手で腰の黒い方の銃を抜き取り、右手で一瞬にして心刀マリを出した。

2本の銃はヤマトの方に向いている。

そして
パンッパンッパンッ…
急に乾いた音がリングに響き渡った。
その音はなりやむ気配はない。

ヤマトはというと、その銃弾をなんの苦もなく…といった風に避けていく。

周りの観客からすれば、とんでもない速さなのだが、

ヴァンクールは銃弾を撃ちながら思い切り最大まで翼を羽ばたかせた。


「おぉー!」
観客のざわめきがコロシアムを包み込む。

ヴァンクールよりも下のリング上の空間が一気に真っ赤になったのだ。
正直、アシェルたちには中がどうなっているのかわからない。
それほど空間が真っ赤に染まっている。

しかもヴァンクールは銃を撃ち続けている。

心刀マリの銃弾はなくならないようだが、途中左手に装備されたハンドガンの弾がきれると、器用に口で入れ替えていた。


「ヴァンクールには中の様子見えてんのかな。」
アシェルがぽつりと呟いた瞬間。


「あれ!」
サギリが叫んだと思うと、ヴァンクールの下にかかっていた赤い熱風だけが裂けたように見えた。

ーーーー
(っ!)
その時、ヴァンクールも羽根を羽ばたかせ高度を少しあげる。

「はぁぁ!」
ガキンッ!
金属音がぶつかった。

熱風の裂け目から現れたのは、ヤマトだ。
ヤマトの一撃をヴァンクールは心刀マリで防ぐ。


(こいつ…。)
けがをしていない。
火傷の気配もない。

しかも、先ほどまでの好奇心に満ち溢れた表情ではなかった。

ー獲物の喉に食らいつこうとする猛獣の目。


ヴァンクールはヤマトの重たい一撃を支えつつ、左手のハンドガンで頭を狙う。
パンッ

ヤマトは軽々とそれを避けて、その一瞬を見計らって剣を先ほどよりも強い力で押した。

元々力のさほど強くないヴァンクールは力負けし、ヤマトに上から抑えつけられるような姿勢になる。

その瞬間、ヤマトが身を翻した。ヴァンクールも左手の銃を構える。

(あっ…!)
ヴァンクールの顔の上にヤマトの足の影が出来た。ヴァンクールもすかさず銃弾を撃つ。

ードンッ

わずかに血が飛び散ったのが2人には見えた。


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あきゅろす。
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