ブラストバーン・フェニックス

『えっ…?』
(歓声が一気に聞こえなくなった。)

マリには歓声が聞こえているから、ヴァンクールがおかされている状況をすぐに把握できた。


ヴァンクールは未だにヤマトを睨み付けている。
するとようやくヤマトは剣をビュッと上から下へと振ってヴァンクールへと向ける。

それを見てヴァンクールも短刀を顔の前に構えた。

その瞬間、周りの人々にはヤマトがフッと消えたように見えただろう。

ガキンッ
ほとんど一瞬のうちに、互いの武器は交わった。

(本当に速いな…)
そのままヴァンクールは左手に持ったハンドガンをヤマトに向ける。

ヤマトはその様子を見て、ニヤリと笑うとヤマトはあいた左手で思い切りハンドガンを殴り上げた。

(なにっ!)
ハンドガンはヴァンクールの手から抜けて飛んでいった。

ガチャンッ

そのまま、ヤマトはヴァンクールを殴ろうとした瞬間、
「っ!」
ヴァンクールの広げた左手がヤマトの顔をつかむように、ものすごい速さで近づいてきた。

ヴァンクールのことを殴ることは出来たかもしれないが、ヤマトは危険を感じヴァンクールから離れる。

ーボンッ!

離れた瞬間、ヴァンクールの左手の平が爆発した。

ヤマトは目を丸くして、スタッとヴァンクールから少し離れたところに着地する。
「あぶねー」
あのままヤマトがヴァンクールを殴ろうとしたならば、ヤマトの頭は吹き飛んだだろう。

(楽勝で避けたくせに。)

ヴァンクールは少しムッとしてから、
両手で体を抱くようして前にしゃがみこんだ。

「?」
ヤマトはその場に立ち尽くしてじっとヴァンクールの様子を見ている。

ヴァンクールがさっきより小さくなったと思うと、Tシャツの背中の部分が徐々に膨らんできた。


「…?」
モニターを通してその様子をみていたアシェルには、ヴァンクールがなにをするのか、想像もつかなかった。
すると
「あれ…見たことあるよ。」
ランナが静かに呟く。

「えっ?」
ランナはこちらを見ずに、
「アストラシアでの戦いの時に、セイカを相手に使ってた…。」

アシェルはそれを聞きながら、今度はリング上のヴァンクールに目をやった。

その時、ヴァンクールが体を起こすのと同時に、ヴァンクールの背中から
「翼…」
とても巨大な翼が生えたのだった。

翼といっても、美しい純白の天使の羽根ではなく、真っ赤な業火の羽根だった。しかし、とても神秘的である。

「まるで不死鳥みたいだ。」
アシェルがぽつりと呟くと、
「不死鳥だよ。
太陽の力の象徴みたいなものなんだ。」
ランナがやっとこちらを向いて話した。

「あの技はなんなんだ?」するとランナは眉間にシワをよせながら
「あれは、ブラストバーンっていって、炎の温度がすごくなるんだよ。
あの時はヴァンが翼を動かすだけで熱風ですごいことになってた。」
と言った。
ランナの説明と表情だけで、どれほど威力がなのかはだいたい予想はできる。


(あの炎、普通の人間は絶対に殺される…。)
アシェルは業火の翼を目を細めて見ていた。


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