未知の力

ヴァンクールは
ジャキッ
と心刀マリと、腰の銀のハンドガンを構える。
ヴァンクールが2丁構えているのは初めてだ。

しかしヤマトは全く動こうとしない。

ヴァンクールは
(余裕って感じだ。
ムカつく…)
と片方の目を細めゆっくりと指の力を強めていく。

その瞬間、ヤマトが一歩前に出した。
ヴァンクールも同時に
パンッパンッパンッ…
と前にものすごいスピードで直進しながら、銃弾を撃ち込んでいく。

しかしヤマトがその銃弾をくらう訳もなく、全てを華麗によけていた。

ヴァンクールは全く表情を変えず、ヤマトに直進しながら右手の心刀を一時消して、腰にぶら下がった短刀を握る。

左手はハンドガンで塞がっているために、短刀の鞘の部分を口でくわえて、右手で勢いよく刀を抜いた。

口元の鞘はその後すぐに口元から離され、カランッと音をたてて地面に落とされる。

依然としてヴァンクールは左手のハンドガンを撃ってどんどんヤマトに近づいている。

あと数メートルというところで、ヤマトの顔が急に笑った。
(っ!?)

あと数センチ…
ヤマトの体を目映い光が包む。

「ぅぁっ!」
ヴァンクールは顔を両手で覆う。
徐々に光が大きくなるにつれて、ヴァンクールの体はヤマトの近くからジリジリと引きはがされていく。

「はぁっ」
ヤマトが叫んだ瞬間、急に光は大きくなってヴァンクールの体は吹き飛んだ。

ヴァンクールは空中で素早く受け身をとると、くるくると回転してから着地した。
未だに、ヤマトは体から光を放っている。

(なんなんだ?
あいつの力は…?)
また心刀マリを出した瞬間、ヴァンクールの頭を一筋の光が通りすぎていった。

その直後、自分の体の異常に気づく。
(…。)
ヴァンクールはヤマトを睨み付けた。
ヤマトはいつ出したのか、彼の心刀である、剣を構えて笑っている。
しかも、体は先ほど通りすぎていった光をまとっていた。

(マリ…あいつの能力はきっと最悪だ。)
『あの光はなに?』
マリが不思議そうに問いかけると、ヴァンクールは耳に手をかける。

(さっき、光に触れただろ?
…そしたら耳が聞こえなくなった。)



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あきゅろす。
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