始まりの紅(あか)

「きゃあー!」
2人が出てきた瞬間、観客の一部の女性が叫んだ。

「ま・さ・か…」
シエルが目をいっぱいに開いて周りの興奮している女性を見つめた。

「可愛い〜」
女性はヴァンクールを見てきゃあきゃあ言っている。

シエルとなぜかランナも信じられんといった顔で、女性を見つめていた。

すると、なぜかそのタイミングでヒロがシエル肩をトントンたたく。

「なぁに〜?」

シエルが先ほどの顔をしていた人物とは別人のように、可愛らしく微笑むとヒロは
「はい!」
とシエルに小さな紙袋を渡した。

「?」
シエルは不思議そうな顔をして、紙袋のシールをめくる。

その瞬間。シエルの顔が輝いた。
「ヴァンからだ。」
そう、ヒロが笑ったあと、
シエルは中から、可愛い赤いカチュームを取り出すと、慣れた手つきで頭につける。

「いいじゃん。それ、」
アシェルがニコニコする。

シエルはアシェルに微笑みかけてから、
「ヴァンー!」
と、本当にばかでかい声で叫んだ。

ヴァンクールは少し恥ずかしそうに、シエルの方を見る。

シエルはジェスチャーで頭のカチュームを指さして、
「ありがとうー!」
と叫んだ。
ヴァンクールは微笑んで、指をグッとたてた。

ーーーー

ヴァンクールはシエルが喜んでくれたのを喜んでいたが、相手のヤマトをみた瞬間に戦闘モードに入った。

ヤマトは先ほどの様子を見てニヤニヤ笑っている。

ヴァンクールはその微笑みにイライラしつつ、
いきなり心刀マリをだした。

まだ始まってもなく、本当に一瞬のことに、騒いでいた観客たちも静まった。

「準備ができたようですね?」
審判が2人を交互に見る。
そして、一度うなずき
「それでは!!決勝戦…
はじめ!」

リングを激しい声援が包み込んだ。

「フー」
ヴァンクールは一度、大きな深呼吸をして、肩を回しながら
一度晴天の空を見上げた。
正午の太陽は驚くほどに紅(あか)かった。



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あきゅろす。
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