何が起こったの?

ヴァンクールは銃をアスランに向ける。

ざわざわと観客がざわめいた。
ヴァンクールが自分の目で照準をあわせてよく狙っているから。

アスランも目を細めていつヴァンクールが撃っても避けられるように構えていた。

ヴァンクールはアスランをじっと見つめていた。
そのままゆっくりと引きがねに力を加える。

パンッ

という、乾いた音は聞こえなかった。
その変わりに
ゴォー
リングの上を真っ赤な炎が走った。
銃口から一匹の竜のようにも見える業火が地面を砕きながら銃弾と同じ速度でアスランを狙って突き進んでいる。

「っ!」
そのまま炎の竜はアスランを呑み込んでしまった。

ヴァンクールはいまだにアスランのいた場所に燃え盛る業火を見つめながらゆっくりと立ち上がる。

「アシェルー、ヴァン失格なんじゃ…」
ランナが心配そうにアシェルの隣で呟いた。
たしかに相手を殺してしまえば失格になる。
…しかし、ヴァンクールはまだ心刀をしまっていない。
ここからじゃよく見えないが、まだ生きているのだろう。

ヴァンクールは今一度銃を構えた。
炎はいまだに消えていないが普通だともう灰になってもいいころだ。

その瞬間炎が急速に渦を巻き始める。
ヴァンクールは目を細めて、眉をよせてゆっくりと炎の渦へと銃を構えながら歩み寄った。

渦はだんだんと細くなって、まるで炎の竜巻のように見える。
そのまま人の細さほど細くなると

「ビュンッ」
と風を切る音と同時に内部から弾けて、炎は跡形もなく消え去った。

「ああっ!」
客席がざわめく。
…炎の中に誰もいなかったからだ。

しかしモニターに映るヴァンクールの顔がピクリとも動かないのを見てアシェルはほっとした。

ヴァンクールはゆっくりと誰もいない焼け跡へと歩いていく。

ガチャ
ヴァンクールは炎の中心だった空間に銃を構えた。
「?」
全員何をしているのだろうと思っただろう。

観客は何が起こっているのかわからずモニターにくぎずけになる。
不意にヴァンクールの口元が動いた。
しかしその音声は小さすぎて拾えなかったようだ。
すると何もなかった空間から一瞬でアスランが現れる。

ざわざわと驚きの声が会場を包んだ。

アスランは手をあげた。
「わたしの敗けです。」

急な展開で何がなんだかわからない。アスランが何か力を使っていたのはたしかだが。

「おぉっと!何事でしょう!アスラン氏が降参しました。
アスラン氏がどんな力を使ったのか、ヴァンクール君は何に気づいたのか…
全てが皆無ですが、
ヴァンクールの勝利です!」
審判がはきはきと試合結果を伝えることで、観客のいろんなもやもやも一瞬で消えてしまったよう。
一気に大きな歓声がコロシアム内を包んだのだった。

準決勝はヴァンクールは鷺と、もう一試合はシエルを打ち負かしたヤマトとカルロスという青年の試合だ。

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