シエルの敗北
〜シエルの試合後〜

「おい!シエルは大丈夫なのか?」
暗い試合の控え室の中にヴァンクールのよくとおる声が響いた。
シエルは担架に乗せられて近くの病院に向かう途中で、その担架を運んでいる若い看護師が
「はい。気絶しているだけですので、すぐに目覚めますよ。」
とにっこり笑ったのを見てヴァンクールは胸をなでおろした。

(マリ…あのヤマトってやつのスピード見たか?)
マリはそのヴァンクールの無表情な問いかけに
『うん。ねえもしかして…』
(ああ。もしかすると俺より早いかもしれないんだ。)
スピードを異常なほどに強化し続けてきたヴァンクールにとってそれは焦りでもあり、悔しさでもあった。


そのまま若い看護師についていくと小さな病室に辿りついた。
シエルをベッドに寝かせてから、
「じきに目が覚めると思います。
ここにいてあげてください。」
とヴァンクールに言うなり部屋を出て行った。

ヴァンクールはベッドの横にある、背もたれのないただの椅子にゆっくり腰掛けてシエルボーっと見ていた。
『ヴァン、やっぱり気になるの?』
マリが少し心配そうに首をかしげる。
(まあ、ヤマトと当たるとしたら決勝だろ…
あいつ…何をしたんだろう。
素であのスピードなのか?)

その時、
ーピンポンパンポン
「ただいまより、2回戦を始めます。
選手は控え室におこしください。」
『2回戦もやるんだ!』
たしかに時間的に余裕で始められるだろう。

(マリ、行こうか…。)
ヴァンクールは静かに病室を後にした。


ーーーー

「シエル負けちゃったね…。」
観客席の一角でランナはつぶやいた。
ヒロはランナの頭にポンと手をおいて、
「あれは無理だよ。」
と真顔でつぶやく。

ランナはコロシアムのモニターに目をやって
「ってかシードのアシェルが騒いでた人、3回戦からだって。なんかせこいねー…。」
ヒロもモニターを見つめながら、
「相当強いんでしょ。」
と微笑んだ。


「それでは2回戦を始めます。
1試合目は…」
すぐに2回戦が始まった。




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