トーナメント1試合目(シエル)

「じゃあ、頑張るよ!」
シエルはリングへの入り口まで送ってくれたヴァンクールに手をふった。
ヴァンクールもにっこりして
「あぁ。きっと勝てるよ!」

そう言うとシエルは嬉しそうに歓声の中へと飛び込んで行った。


シエルが対戦相手のヤマトを見ると、ヤマトは軽そうな服装と軽そうな剣でシエルは少し警戒する。
なぜなら弱いやつはいつもかなりの重装備というのがお決まりだからだ。


シエルはゆっくりと深呼吸して両手をつきだした。
シエルの両手に光が集まって、心刀シャインが現れる。
その瞬間
「ワー!」
と客席から歓声があがった。
予選を見た客がシエルのことをよく覚えていたためだ。

そして
「はじめ!」
審判の合図がコロシアムに響く。



先に動いたのはヤマト。
ヤマトはいきなりシエルに向かって剣での突きを繰り出したのだった。
シエルはびっくりして鎌で受け止める。
キィンッ
独特の金属音がコロシアムに響き、それとほぼ同時に
「ワー!」
と歓声が響く。

シエルはヤマトの攻撃を受け止めながら、鎌に風をまとい始める。

ヤマトはそれを警戒してシエルから離れるために大きく後ろにジャンプしつつ
「はっ!」
と剣を投げつけた。

それと同時にシエルが思い切り鎌をヤマトに向かって振ると、大きな鎌鼬がシエルに向かって飛んできた剣をリングの端へと弾き飛ばし、ヤマトめがけて飛んでいった。


そのまま
「あっ!」
鎌鼬がヤマトに直撃したように見えた。そして煙があがってよく見えなくなった。
シエルは口元を両手で抑えてヤマトの方へと走っていく。
さすがに真っ二つとまではいかないが直撃すればなかなかの威力があるはず。


シエルは煙の近くによると、
一瞬で煙が晴れた。

びっくりして後ろに下がってヤマトを見ると、
ヤマトは右肩を回しながら、右手には細剣をもっている。

シエルから見てヤマトは何事もなかったようにみえた。
その試合を見ていたヴァンクールやヒロやランナもヤマトはなかなかのやり手だということがわかっただろう。

シエルはヤマトの持った美しい細工のしてある細剣を見つめる。
(心刀よね?)
シャインは静かに
『うん、』
と呟いた。

この世界では心刀を持っているということは、戦闘に関してのエキスパートとほぼ一致する。
シエルはもう一度ゆっくり深呼吸して、鎌を構えた。

ヤマトはニヤッと笑って右手で細剣をくるくる回しながらシエルに近づいてくるのでシエルは一歩ずつさがった。

その時、
「シエル!落ち着け。」
ヴァンクールのよく通る声が歓声にかき消されずにシエルの耳に届く。

シエルははっとして、鎌を強く握りしめてヤマトを睨み付けた。
そのヤマトはヴァンクールを冷たい目で見つめていた。

その冷たい目のままヤマトはシエルの方を向く。
その瞬間、シエルは鎌を思い切りヤマトに振った。

ヤマトはニヤリと笑って細剣を一振りして鎌鼬をかきけす。
その時、ヤマトの目の前にシエルが現れた。
「なにっ!?」
思いもしないものすごい速さで現れたものだからヤマトも驚きを隠せないようだ。


(獲った!)
シエルは殺さないように、鎌の持ち手の部分でヤマトに殴りかかる。

(よし!)


…誰もがそう思った。



しかし吹き飛んだのはシエルだった。
右手を器用につかって細剣の柄の先を反転させてシエルのでこに突きだした、あまりの早業に客席の歓声が一瞬消えた。



結局試合はシエルが気絶したためにヤマトの勝ち。


ヴァンクールの胸にはなにか突っかかるものがあった。

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