一回戦
ドンドンッドンドンッ
「どーぞー」
ぐっすりと温かいベッドで寝ることが出来て、いつもよりぱっちりと目が覚めたヴァンクールは、「んー」と伸びをしてから返事をするとシエルが勢いよく部屋に入ってきた。
「ヴァン!」
シエルはもうすっかり着替えている。
ヴァンクールはまだぼやぼやしている目を擦って、枕元に置いてある時計に目を向けた。
うっすらと開いていた目が限界まで開く。
「またかよ!」
自分ではすっかりいい感じに起床したつもりだったのに、時計は集合時間の15分前を指していた。
ヴァンクールはベッドから飛び出すと、急いで服を脱ぐ。
ズボンに手をかけようとした瞬間、バッとシエルを見る。
「おい…。」
シエルは目を手で覆いながら、しかし指の隙間を開いてこちらを見ていた。
「すいませんねえ」
シエルは変な声を出して、にっこり笑う。
ヴァンクールはシエルを睨んでいたが、時間の事を思いだし(もういいや)とシエルの前で着替えを済ました。
そのあと、歯磨きを何分かして顔を洗って2人してホテルを飛び出した。
ーーーー
集合場所のコロシアムの中に着くと、もう59人揃っているといわれた。
「最後じゃんかー」
とシエルがヴァンクールの肩をつつく。
そして簡単な説明をされてからすぐに一回戦がスタートしたのだった。
ーーーー
ヒロとランナはコロシアムの客席の前の方に陣取って、対戦表を眺めていた。
「一回戦のヴァンの相手がカブラ…シエルはヤマト…。」
ヒロがボーッとしているのを見て、
「見てもわかんないね。」
と小さく微笑んだ。
そのとき
「一回戦第一試合、フリオ選手対ヒルベルト選手!」それが本戦の始まりの合図となって観客は皆熱狂した。
「はじめ!」
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1時間後
「ヴァン負けちゃダメよ!」
シエルの楽しそうなガッツポーズに見送られて、ヴァンクールはゆっくりとものすごい歓声の中に足を踏み入れた。
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