あれは誰なんだ。
「おい。椎葉さん」
中庭に入ってからようやくヴァンクールは呼ぶ。
その言葉に前方を歩いていた椎葉は立ち止まり、ヴァンクールの方を見た。
「おぉ。どうした?」
椎葉はそこから病院の中庭のベンチに腰を下ろした。
それをみて小走りでヴァンクールも隣に座る。
ヴァンクールは一度、その場で深く深呼吸してから椎葉のきょとんとした顔を見つめる。
「なあ。色々ゴタゴタあって、聞くの忘れてたんだけど。」
それからヴァンクールは下を向いた。
そして、小さく
「エヴァって誰。」
ヴァンクールたちがミカミについて、初めて椎葉に会ったとき。
椎葉はヴァンクールに「エヴァか?」と聞いた。
ヴァンクールが「違う」と言った瞬間にとてもホッとしていた。
その言葉に椎葉は急に真顔になる。
「前の太陽の能力者だ」
「…。」
ヴァンクールは言葉を失った。
つまり、元セイカの心刀。
「厳密に言うと…セイカの息子、エヴァだ。」
ヴァンクールの体に震えが走った。
「セイカは自分の息子を心刀にしてたのか?」
椎葉はゆっくりうなずいてから、
「お前の父がエヴァを殺した。だからセイカはバレンチアを殺しに来た。まあ、返り討ちにあった訳だ。」
ヴァンクールは目を細める。
「復讐ってこと、」
椎葉はうなずいた。
「しかし、それだけではないぞ。絶対に奴にはお前を心刀にしたあと、なにかことを起こすだろう。」
ヴァンクールは長い睫毛を伏せた。
「俺もそう思う。わざわざ騎士になったんだし。」
「最終的にお前たちはカストレに足を運ぶことになるだろう。」
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