静寂へ

…俺は、

死んだのか?


パチッ
「はっ!」
『わあっ!』
俺が勢いよく飛び上がっると、マリの顔が目の前にあった。


俺は辺りをキョロキョロ見回す。


体は…
なんともない。
その事を確認してから俺はゆっくり立ち上がった。

森の中をゆっくり進むと、

「あ…。」
一本の木の根本に人影がある、近づいてみると


『オリバー…』
それは眠るようにして、口から一筋の血を流して死んでいるオリバーだった。

胸には俺のバタフライナイフが煌めいてその存在を示している。


(マリ…)
マリはハッとして後ろを向く。

俺は目を細めながら、ゆっくりとナイフを抜いた。


『…あの時計がオリバーだったんだね。』
俺はオリバーを見つめながら、静かに

「こいつの能力は本当に賭けだな。俺がセイカとの戦いで死ぬかが一番の賭けなんだ。」



マリとの会話はそれ以上続かなかった。






ーーーー

2人でゆっくり元の道を戻って、廃村に戻ると

「あっ!」
アシェルが家の前で座っていた。

「ヴァンクール。時雨さんしらないか?」
アシェルは風に髪をなびかせながら俺の顔を見ないで呟いた。


俺はアシェルの横に腰かけて、
「知らないな。」
と下を向いて返す。


アシェルは俺の顔をじっと見て、
「ケガしてない。」
と驚いたように小さく呟いた。

「おまえもな。」
そう言うと
アシェルは目をふせ
「なんか、辛いよ。」

俺は目を丸くした
初めて聞くアシェルの弱音。


俺はアシェルの頭に手をのせて、静かにうなずいて

…俺も。
あの実力差は悔しかったな…

唇を噛み締めた。

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