13時

時計の針は13時を示している。

俺は唾を飲み込んだ、
オリバーの歌が気になって仕方ないのだ。

「悪魔か…」
俺は額に汗を浮かべながら階段を登って、廊下の一番奥の13番目の部屋の前に立った。


廊下の奥は真っ暗で、いかにもなにかある…そんな感じで、だいたい誰が出てくるのかは想像がついていた。

俺は意を決して冷たい扉を押した。

ギィ。
部屋の中に入った瞬間、

「はっ!?」
目の前に銀色があった。
必死で避けるが
ズキンッ
顔の右半分に鈍い痛み。

暗い部屋で、あの金髪は映えている。
やはり…
「セイカ。」


いきなり攻撃してくるなんてセイカしかいない。

俺は右の目をおさえながら、睨み付ける。

セイカは笑っていた。
『ヴァン!大丈夫?』
俺はその言葉どほぼ同時に心刀を出す。


右目がイカれたせいで、完全に勝機を失った。

(逃げ切るわ…)
マリも黙ってうなずく。



俺はジリジリと後ろに下がる。

カタンッ
「っ!」
何かを蹴った。


その瞬間、
俺のからだの横を風が通りすぎる。

(やばい!)
さすがに俺でもこの風の正体がセイカだってことくらいわかる。

セイカはとっくに俺の後ろでナイフをかまえていた。
「っ!」
俺は夢中で太陽の炎を体に纏う。


ビュンッ
セイカはその瞬間ナイフを俺の後ろ首目掛けて振ったが、太陽の炎で溶けた。


「小賢しい!」
セイカが叫んだ瞬間、俺は思ってもいないのに
「!?」
体を纏っていた炎がなくなったのに気づいた。


炎がなくなった瞬間、俺は素早く後ろを向いて、
パンッパンッ
と銃を2発撃つが

目の前にセイカの本当に嫌な笑みが見えて…


バキバキッ
ードンッ

「ぐぅっ…!」

聞こえたのは俺の腰の骨が砕ける音と、壁にぶつかる鈍い音、
『ヴァン!』
マリが必死に叫ぶ声で目を開けると

「死ね!」
目の前に自分の腕を引いているセイカ。

俺はギリギリのところで左に回転して避ける。
ドカンッ

ーセイカの攻撃をくらえば死ぬ。…太陽も何故か使えない。


俺は銃をセイカに向かって撃ち込む。
ガキンッ
やはりセイカはすれすれのところで避けて弾は壁に当たるだけだった。

そのままセイカはこちらに走ってきている。

俺はバックしながらセイカに向かってまた銃を打ち込む。
セイカは目にもとまらぬ早さで避けたあと、俺の頭の真上に拳を振り上げて飛んで、思い切り拳を突き下ろした。
ドゴンッ!
俺は間一髪で後ろにジャンプしてよける。

しかしセイカはこちらを見て嫌な笑みをした。
手には何か持っている
「?」
俺は目を凝らして見ると、

(床板だ!)
先ほど自分の拳で砕いた床板を剥ぎ取ったのだ。

セイカはその床板を後ろに引いた。
『ヴァン!危ない!』

俺は素早く空中でナイフを構える。さすがに空中では避けられないから…

ビュンッ
恐ろしいスピードで床板は投げられた。
床板はまっすぐに俺の顔を狙っているから。ナイフを顔の前に構える。

(大丈夫だ!)

その瞬間、
床板が消えた。
「はっ?」

そのまま俺は壁にすごい勢いで突き飛ばされる。


俺は何が起こったのかわからなくてただ目を大きく開いていると。
「今のが見えなかったの?
顔に当たる前に、他の板をその板に当てたの。そしたら上手く方向が変わったわね。」
コツ…コツ…
金髪をなびかせてセイカは歩み寄ってくる。
(にげなきゃ。)

俺は動こうとするが
ズキィ!
体に激痛が走った。

腹を見ると、さっきの床板が腹を貫通して壁に突き刺さっていて動けない。

「ヴァンクール。」
セイカは目の前で立ち止まった。

怖い。怖い。

セイカが笑顔で俺の顔を覗き込んだ。

ーポンッ

身体中の毛が逆立った。

セイカの手は俺の頭の上に置かれている。

嫌でもあの夏のことを思い出した。

「…!」
俺は目をつむった。


「オリバーはお前の記憶なんか知らない。」
耳元で囁かれる。


目を開けるとそこは大広間だった。



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