10時

俺は次の扉を開いた。


ギィ…



ここは、カストレのエレベーターの中。

ということは。

「ヴァンクール。」
優しい声がした。
俺がバッと顔をあげると、目の前にアシェルの穏やかな顔がある。

「アシェル…」

アシェルは俺の頭の上にポンと手をおいた。
アシェルになら手を置かれても、大丈夫になった。


「ヒントを教えるよ。
オリバーは自らヴァンクールに手をくだせない。」

…。
(戦った人じゃないのか。)
『ますます勝てる気がしないよ…』
マリが肩を落とした。



「アシェルはなんで俺を…殺さないんだ?」
本当のアシェルじゃないから、一番聞きたかったことを聞いてみた。

アシェルは目をつぶって、片手を俺の上に置いたまま、もう片手を胸に当てて
「フレイルと俺の2人の意見だ。」


「でも、俺を生かして平和にすることの方が難しいんだ…!」
俺は声を張り上げてしまった。


アシェルは俺の目を少し困ったように見てから、ポンポンと2回頭を叩く。

「バカだなー。
そんなこと聞くなよ。
友達を殺すわけないだろ。
お前だって、仲間は死んでほしくないだろ。」

アシェルの本当に自然な笑顔に涙が出そうになる。


その瞬間、
目の前の景色が変わって大広間に変わった。

『ヴァン。あと少しだよ。』
マリが笑って肩を叩く。

俺は頷いて、
つぎの11時の扉を押した

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あきゅろす。
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