最後の力
時雨は唇を噛み締めた。
(こんなガキには負けられない)
刀を杖代わりにして、足を引きずりながら立ち上がる。
全身が悲鳴をあげた。
エージェントの蹴りによって腹がえぐれいる。
「ぐぅっ」
苦しそうな声をあげながらも刀を構えた。
チャキッ
「だ〜か〜ら〜。
構えが変だって。」
エージェントは木の上に座っていた。
時雨は瞳を閉じる…。
エージェントは変な構えをしながら目を閉じている時雨を驚いているような、笑っているような表情で見ていた。
時雨は周りの風の静けさを感じ取っている。
(俺たち以外には周りに誰もいないな。)
時雨は全神経を研ぎ澄ませているからエージェントも容易に攻撃できないようだ。
時雨は静かに目を開けるとエージェントに向かって、ニヤリと笑った。
(なんだよ。)
エージェントはその笑顔を見て、少し嫌な予感。
時雨は逃げない様子をみて一度頷くと、
ザクッ
と、刀を地面に突き刺した。
「あっ」
地面が少し揺れたような気がして
その後すぐにエージェントの視界が激しくぶれる。
ゴオォォ…
それは時雨の周りのすべての木が何かの爆発に巻き込まれたみたいに、塵と化して消えた瞬間だった。
その後、元森のだだっ広い平原で時雨は刀の上に額をのせて意識を手放した。
――――
〜カストレ〜
「うわあ。ありがとね」
エージェントが一人の青年に礼を言った。
「エージェントがとっさに俺の意識に話しかけたからだ。間に合ってよかった。」
「ジャンの能力は本当に役にたつよ〜。直接心に語りかけて、その対象を移動させることができるなんて。」
その言葉にジャンは笑う。
「対象が俺を求めて初めて意志の対話ができるからな。はっきりいって仲良しさんしかつかえないがな。」
「でも、みんなその力に助けられてる。」
エージェントがにっこり笑うと、ジャンはひどく照れた。
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