白き貴婦人 ten 「あ、の……あの!怪我を、されておられるので、しょうか……?」 「……だったらなんだ。言っとくけどな、俺は黙ってやられるほど、弱くはねえぜ?ましてや女なんかに遅れはとらねえ」 「いえ、その…………怪我の手当てを、させてはいただけません、か?」 「はあ?」 帽子屋のNo2、エリオット=マーチ。 短気ですぐに発砲すると、わかってはいるのだが……道端で怪我をした、動物を放っておけない道理と同じ。 腕を銃で撃たれたのだろう、おぼろげながらもようやく姿形がハッキリ見えてきた。 「お前、正気か?俺が誰だかわかってないのか」 「……わたくしには、分かりません。ですが、」 アマネはエリオットをまっすぐ見た。 「怪我をしている方を放っておけるほど、わたくしは非道な人間ではありません」 そう言って、ソッとエリオットに近づく。 エリオットは銃をつきつけてくるが、震える手を叱咤して治療にかかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |