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二月の夜の冷えた空気。
ブランケット越しでもその冷たさが伝わってくる。

すっかり冷えて眠れなくなった体を温めようと、紅茶を淹れにキッチンを拝借している。
こぽこぽと不規則な音をたてて、ポットの中の湯が沸き立った。

「紅茶でしたら、私に申し付けて下されば寝室までお届けしましたのに。」

「…ロノウェっ!いきなり出てこないでよ。」


いきなり声を掛けられびくりと後ろを振り返ると、そこには悪魔な執事。

恭しくお辞儀をしたロノウェが、私の代わりに紅茶を淹れ始める。

紅茶ならロノウェが淹れたほうが絶対美味しい、そう思った私は大人しくその場を譲った。



私の前には一つのティーカップ。
ローズヒップに真っ赤な薔薇が浮いていて目でも楽しめる。

「わあ…すごい可愛い。」

「ぷっくっく、お気に召していただけたようで光栄です。」

ふう、と息を吹くと花びらが揺れて本当に可愛らしい。
ロノウェのこういうところ、好きだなあ。

「じゃあいただきます。」

「はい、…いや、少し待っていただけませんか。」

「え?」

そういうとロノウェはカップに手を翳した。不思議に思いカップをじっと見ていると、なんと濃いピンクの紅茶がこげ茶色に曇ってきた。

そして浮かんでいた薔薇が薄いピンクの光沢のある花に変わっていく。それと同時に甘い匂いが広がった。いちごチョコ、だ。

どちらの色も完全に変わったあと、ロノウェがぱちんと指を弾くとどこからか金色の蝶が現れ、チョコレートの上に金色の鱗粉をふりかけ、そして最後に蝶々もチョコレートになりカップの淵に止まった。

「名前様、ハッピー・ヴァレンタイン。」

ロノウェの言葉に振り子時計の十二時の鐘が重なる。
そうか、今日は。

「ありがとう!」

「さぁさ、チョコが溶けてしまわないうちにどうぞ。甘さ控え目ミルク多目のココアドリンクです。」

一口啜ると、甘みと暖かさがじわりと体に広がった。
それはまるでロノウェの優しさがそのままそこにあるようで。

「ロノウェ、好き。」

どうしてだろう、普段はあんなに恥ずかしくていえない言葉が、ふわりと溶けてでた。
もしかしたら私も紅茶と一緒に、魔法にかかってしまったのかもしれない。

「私もですよ。」

抱きしめられた腕は、ココアよりも暖かった。





“Princess in the book is you!”




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魔法のくだりが書きたかっただけ
*バレンタインフリーでした。現在はフリーではありません。*

20100220 のあ初季

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あきゅろす。
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