[携帯モード] [URL送信]





「ちょっ、なっ。」



咄嗟のことに、一瞬反応が遅れる。


服越しに触れあう胸元を、思いっきり押し返した。




「会長っ。一体なにして!」



き、き、キスっ。なんてっ。




「うるせぇな。てめぇがきもちワリィこと言うからだろうが。誰があんなクソモジャ好きになんだよ。」



......クソモジャ。

まぁ、もじゃもじゃしてると言えばしてるけど。




ていうか、


「え、会長。転校生のこと好きじゃないの?」


俺はこっちの方が気になって。


「あ? 好きなわけねぇだろ、ふざけんな。どこをどう見たらそんなことになんだ。」

「どこを、って。......、どこをどう見てもそうとしか見えなかった。」


それに、愛先輩だって。



「お前がなにをどう見てたとしても関係ねぇ。俺は、あのクソモジャのことなんか好きじゃない。俺が好きなのは、」

「ほんとに?」



たまらず、会長の言葉を遮ってそう問いかける。


これが、夢か何かじゃないことを願いたい。



「ほんとに転校生のこと好きじゃないの。」

「あぁ。」

「......そっか。」



そっか。





俺はたぶん、今すごく嫌なことを考えている。


会長が転校生のことを好きじゃないって知って、ほっとして喜んで。

彼の気持ちを全く考えてない。

きっと彼は、彼の方は俺の思い違いなんかじゃなくて。きっと、




「おい、桜庭。」

「へ? あ、ぁ、はい。」



すぐ傍から聞こえてきた声に我に返る。



あぁ、そうだ。俺、今会長と。

さっきとはうって変わって固い表情を浮かべる会長に、笑みが漏れそうになるのは愛故だ。




俺は、こんな可愛い人を他に知らないから。




「ぁ、桜庭。俺は、」





会長の口が動く。

視線が一瞬、俺の背中へと逸らされた。




その瞬間。




ーーーーカシャ。




響き渡るのは、カメラのフラッシュ音。






二人して、その場に固まる。







[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!