4 俺は、 「会長がす」 「好きなんだ。愛してるんだ。だから俺と付き合って。」 そう。付き合って、って......。 「え............!?」 え、えっ!? なに今の! どこからともなく変な声がっ。 俺の声が、どこかから勝手に! 「ぇ、......さくら、ば? いまの、」 耳を打つ、震えた声に我に返る。 目を大きく見開いて、こちらを見てくる会長に大急ぎで首を横に振る。 「え、ぁ。違う、違うっ! 今の俺じゃなくて」 「ちがう、のか。」 「ぇ、あ、いや。違うくはない。違うことはないけど......。」 言いながら、きょろきょろと辺りを見回す。 一体誰だ。 俺の言葉を遮って、会長に愛の告白をしたやつは。 俺の声に似すぎてて、一瞬分からなかった。ほんとに自分が言ったかと、 「おい。桜庭っ!」 「ぇ、ぁ」 突如、身体が引っ張られる感覚。足は意味もなく砂の上を走って。 息が苦しい。 「かい、ちょ」 視界の端に、不自然に上がった紺色のネクタイが見える。 至近距離で合う視線。 会長の表情は、戸惑いと驚きで縁取られている。 「......会長? どうし」 「さっき言ったことは本当なのか?」 「え?」 「さっきの言葉は本当なのかって聞いてんだっ!」 会長の瞳に映る、俺が歪む。 なんでか分からない。どうしてか分からないけど。 会長の頬が、また濡れそうで。 「本当だよ。会長が好き。」 そう言った途端、ネクタイから離れていく会長の手。 それを反射的に捕まえて、ゆっくりと指を絡める。 どくどくと煩い心臓を押さえつけて、おそるおそる会長を伺う。 絡まる視線。 上気した頬。 固く結ばれた唇。 その一つ一つに見たことのない会長を見つける。 頬に残る涙のあとさえ、愛しくて。 [*前へ][次へ#] [戻る] |