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彼が、泣いてしまうのではないかと思ったから。
昨夜見た夢のように、ぼろぼろと。
酷く、美しく泣いてしまうのではないかと心配した。
そんなことあるはずないと分かっているけど。
「いやだな。」
自信家で、俺様で。
何事にも一番なあの会長に、涙は似合わない。
彼がほんとうに泣くことなど、きっとないのだろうけど。
もし、そんな未来がやってくるのだとしたら、俺はーー。
「とりあえず、ハンカチ持ち歩こうかな。」
そっと、ハンカチを差し出すくらいは多分許されるだろう。
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