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「あの、」

「どうぞ二人でこれからたくさん幸せになってください。」

「え、......いや」



え、あれ?

え、まじでなんなの。訳がわからないんだけど。

今、彼泣いてたよね。まさか嬉し泣きだったなんていわないよね。それに、



自分の好きな人が自分ではない人と一緒にいる。そんな光景に、そんな素直に。



【幸せになって】



なんて俺は言えない。俺は、たぶん言えない。




ぎゅっと両手をあわせて握り、大きな目には透明な涙。ほほを上気させてこちらを見つめてくる彼に、目線は自然と下へ下がる。


「会長様、ほんとうによかったですねっ。僕たちも会長様を陰ながら応援できたこと、ほんとうに嬉しく思います。」


え? 応援?


「会長様が桜庭様に想いを寄せられていると聞いたときは、少し悲しくもありましたが、こうして二人が隣に並ばれているのを見ると、ほんとうに幸せな気持ちになれます。」



......なんだか、食い違っている。

なんだか、おかしい。彼は、昔を懐かしむような目をして会長を見る。


対する会長は、どうしてか何かに焦るような表情で、彼を見つめていた。



「え、......会長?」



そんな会長の表情に首を傾げながら、声をかける。その途端。



「さくらばあっ!!」

「ぁ、会長っ!」



俺の名前を叫びながら飛び出してきて愛先輩と、それを合図にするように生徒会室と反対の方へ走っていってしまった会長。そしてそんな会長へ、モーゼのように道を開ける生徒たち。


え、......なにこれ。どうなってるの。


突然のことに驚いて、足が思うように動かない。


「桜庭っ!」

「ぁ、愛先輩。」


会長を追いかけられないまま固まっていると、いつもの怒声に近い声が耳をうつ。声のまま視線を向けてみれば、さっき声をかけてきた親衛隊の子と愛先輩の姿がある。








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