14
会長を前に押し出す形で、自分は後ろに。二人のやりとりを見守ろうとしていた矢先。あのっ、っと。
2回目の呼び声に、後ろから顔を出す。
「あ、あのっ! ぼくっ、会長様ではなくて桜庭様にお話があってっ。」
「え、あ......うん。」
てっきり会長に用事があると思っていたから、驚きつつ足を動かす。会長の視線が一瞬、頼りなく揺れたのが見えてこの先の展開が予想できてしまった。
「あの、」
親衛隊とは、その人を崇拝する者。その人を尊敬する者。その人を守りたい者。その人が好きな者。
そんな人たちが入る組織で、その人たちは皆一様にその人が好きで。見返りを求める者。そうでない者。そんな違いはあっても、その人を大事に思っているこは変わらない。
だから。
彼が俺の目の前に立っている理由も、その身体が震えている理由も、いまにもこぼれ落ちそうな涙を目にいっぱい浮かべている理由も。
分かる気がした。
「さ、......桜庭様っ!」
「......うん。」
会長も、信じられないことに俺と同じ気持ちでいてくれたのだとわかった。俺が好きだと、そう伝えてくれた。
だから俺も。
目の前の彼に正直な気持ちを伝えよう。
「おめでとうございます!!」
「あ、うん。............ーーえ?」
「桜庭様と会長様! 本当におめでとうございます! 僕たちもすごく嬉しいですっ。」
ーーえ?
嬉しい? 彼は今嬉しいと言ったのか。
悲しいの間違いじゃなくて?
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!