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「......愛せんぱい。」


「名字で呼ぶなっつってんだろうが!」

「あー、はいはい。すいません。」

「てめえ!」


拳を固く作り、肩を上げた愛先輩の背後にまたもや人影。ゆらゆら揺れて見える銀の色。


「まぁまぁ、愛ちん。そんな怒ることないじゃん。君の名前はとっても似合ってると思うよー。俺も」

「おい、こら錦。てめぇ」


俺から視線を外し、錦を睨みつける愛先輩の顔は驚くほどに険しい。果たして今までに、愛先輩がここまで酷く表情を歪ませたことがあっただろうか。

俺の記憶のなかで、今の愛先輩は一番怒っている気がする。もう、鬼を通りこして鬼神の表情である。



なんか普通にこわい。




「おい、桜庭。」

「......ん?」



愛先輩と錦のバトルを見ていた俺に、少しの吐息。小声で名前を呼びながら、俺の袖の端をくいくいと引っ張る会長に振り返る。振り返りながらーー、


え、ちょっとまって。なに、それ。

真面目な顔でなにやってんの。

なにその、可愛い動き。


と思ったけれど、口には出さない。こんなこと思ったなんて知られたら引かれかねない。



「こいつらがバカやってる内に廊下に出るぞ。愛に捕まったらめんどくせぇ。」

「あ、うん。分かった。」



一つ頷き、会長の手を握りなおす。途端、ぽっ、と赤くなった耳に口元が緩むのが止められない。





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あきゅろす。
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