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「やー、これで一件落着ですな。」

「うん、そうだねぇー。今ごろ転校生の叔父さんも、理事長代理の椅子から下ろされてることだろうしぃ。」


副会長が出ていった扉の前で、うんうん頷き合う二人になんとも言えない気持ちになりながら、考えるのは彼のこと。



俺と同じ気持ちで会長が好きで。

それなのに、その想いが報われないのはなぜなのか。



もし、会長が俺じゃなくて彼を本当に好きだったなら、彼のように呆然となっていたのは俺だった。

生徒会室の扉の向こう。

小さな声で会長の名前を呼んだのはきっとーー、



「あ、桜庭くん。会長。俺たち用があるんで、失礼しますね。」

「ん、............ぇ?」



ガチャリ。

適当に返事をしてしまったのがいけなかったのか、我にかえったそこに悠たちの姿はなく。




ということは。


今、俺は生徒会で、



「桜庭......。」



会長と二人きり。



「......会長。」



気を抜けば、すぐにでも茹でたこみたいになりそうな頬に手をやり、会長をみる。

それは自惚れでもなんでもなくて。
会長も、俺のように顔か耳を赤くしてこちらを見ていると思っていたのに。


......あれ。


すぐ傍にいる会長は、手を伸ばせば簡単に触れられる距離にいる。それなのに、今彼の纏う雰囲気と、それに似合う表情で手を出すことも戸惑われる。


「会長、どうしたの?」


じっ、と目を合わせてこちらを睨んでくる会長に、恐る恐る問いかける。


ぎゅっ、と強く結ばれた唇は、小さく震えているようにも見える。





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あきゅろす。
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