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くっそー、とすごい勢いでうなだれる悠を横目で見つつ、前を向く。
と。視界に映ったのは、太陽の肩をもち、その場にたたせる副会長の姿で。
「......あいつも知らなかったのか。犬飼のこと。」
ふと、隣から聞こえた声は、間違えるはずもない会長の声。その声に、悠に騙されていたことを会長が意外と気にしていたことが分かる。
自分だけじゃなくて副会長も知らなかったことに安心したんだろうな、と勝手に思ってみたり。
「では会長。私は、これで。」
「ちょっとまってよぉ。」
太陽くんの頭を抱きとめ、生徒会室を出ていこうとする副会長を引き止める会計。
そんな彼に、副会長は分かっているとでも言うように、未だ大人しい太陽くんの頭を撫でる。
「大丈夫ですよ。明日から生徒会の仕事はきちんとしますので。.....太陽のために役職を辞めたいと言っても、会長が許可してくれるはずがありませんからね。」
初めは会計を見ながらだったその言葉は、最後には会長の方を向いていて。
「......あぁ、そうだな。わかってんじゃねぇか。」
その声に、副会長は諦めたように目を伏せる。
だけど、
「副会長を降りることは認められねぇが、一週間の休暇ならやってもいい。ま、休暇明けには普段の倍働いてもらうことになるけどな。」
そう言い、なんともカッコいい笑みを浮かべる会長に、こちらの方が赤くなって困る。
「......えぇ、いいでしょう。では、遠慮なく一週間の休暇をもらいます。」
「あぁ。」
会長の返事を聞き、太陽くんと一緒に生徒会室を出ていく副会長。
その瞬間。
小さく、本当に小さく。
太陽くんが会長を呼ぶ声が聞こえた気がした。
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