※とある王道転校生の恋
授業チャイムと似たような音を響かせ、放送の終わりを告げた機械から視線をそらし、あの空席を見つめる。
三色が、今日も居るはずだからというので来てみればいつもの指定席に彼の姿はなく。
入れ違いになったのだろうか。
彼がここにいないのなら、自分がここに居る意味もない、と。
目に入ってくる鬱陶しい前髪を三色に触られながら、太陽は彼に初めて会ったときのことを思い出していた。
この学園に転入する前、親に勧められるまま入った学校は、所謂合わないというやつだったらしい。
入学して一ヶ月も経たずに辞めたいと言った太陽に、親はいつも通り寛大だった。
そして、それならば、と。
丁度、今年から父親の兄が理事長代理を務めるという、この学園への転入が決まった。
まるで親のように太陽を可愛がってくれる叔父。それに負けず劣らず優しい、この学園の副会長であるらしい三色。優しい雰囲気をした、風紀副委員長の篠。うん、以外ほとんど話さない、静かな悠。悠といつも一緒にいる笑顔が多い、尚。
みんなみんな綺麗な顔をしていた。
そして、
「............ぇ。」
声がでなかった。
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