[携帯モード] [URL送信]






俺は、





「会長がす」

「好きなんだ。愛してるんだ。だから俺と付き合って。」



そう。付き合って、って......。



「え............!?」



え、えっ!? なに今の!

どこからともなく変な声がっ。

俺の声が、どこかから勝手に!



「ぇ、......さくら、ば? いまの、」



耳を打つ、震えた声に我に返る。

目を大きく見開いて、こちらを見てくる会長に大急ぎで首を横に振る。



「え、ぁ。違う、違うっ! 今の俺じゃなくて」

「ちがう、のか。」

「ぇ、あ、いや。違うくはない。違うことはないけど......。」



言いながら、きょろきょろと辺りを見回す。


一体誰だ。


俺の言葉を遮って、会長に愛の告白をしたやつは。
俺の声に似すぎてて、一瞬分からなかった。ほんとに自分が言ったかと、




「おい。桜庭っ!」

「ぇ、ぁ」




突如、身体が引っ張られる感覚。足は意味もなく砂の上を走って。


息が苦しい。


「かい、ちょ」


視界の端に、不自然に上がった紺色のネクタイが見える。



至近距離で合う視線。

会長の表情は、戸惑いと驚きで縁取られている。



「......会長? どうし」

「さっき言ったことは本当なのか?」

「え?」

「さっきの言葉は本当なのかって聞いてんだっ!」



会長の瞳に映る、俺が歪む。


なんでか分からない。どうしてか分からないけど。
会長の頬が、また濡れそうで。




「本当だよ。会長が好き。」




そう言った途端、ネクタイから離れていく会長の手。

それを反射的に捕まえて、ゆっくりと指を絡める。




どくどくと煩い心臓を押さえつけて、おそるおそる会長を伺う。


絡まる視線。

上気した頬。

固く結ばれた唇。


その一つ一つに見たことのない会長を見つける。






頬に残る涙のあとさえ、愛しくて。






[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!