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桜が散っていた。
少し遅い入学式に、本校舎の裏。
彼は俺に背を向け、同じ中等部の制服を着て。......1年だろうか。
彼の胸元につく赤いピンバッチが学年を教えてくれる。
ここから叫んで聞こえるだろうか?
立ち入り禁止の校舎裏。少し悩んで、仕方なく近づく。
砂を擦り歩く音が、彼に俺を存在を気づかせた。
「そこは立ち入り禁止だぞ。」
さっさと出ろ。
驚いたように振り返った彼にそう付け加えて、手の甲でしっしと向こうへ行くよう指示する。
これが、犬を追い払うときにする仕草だと気づいたのはその瞬間で、もし怒りだしたら面倒だなと思いつつ、淡々彼の表情を伺う。
だけれど、予想外に。彼は、
「あ、ごめんなさい。俺、今日はじめて来て。......教えてくれてありがとうございます。」
そう言って、笑顔までみせて、俺に頭を下げた。
桜色の花吹雪のなか。
その、清々しいほど素直な笑顔に、俺は目を奪われてーーーー、
探す、探す、探す。
彼はどこにいるんだろうか。
いつも周りの人間に友好的で、だけどそこには薄い膜が一枚。
話しかけようと何度思っただろう。
拒絶されるのが怖くて踏み出せない。
彼のことになると、途端に弱くなる心が嫌で仕方ない。
「......ら、ば。」
名前を拾って、彼を探して。
声を聞いて、彼を探して。
足音を感じて、彼を探して。
愛を知って、彼を探す。
期待した。声をかけてくれ彼に。
もしかしたら、もしかしたらと。
だけれど、それでも。
「っ、......ぁ、ふっ。」
これが現実で。
俺はいつも探すばかりで。
誰か。誰か。だれか、じゃない。
ーーーー彼がいい。
「さくら、ばっ。」
どうか、俺を。俺を見つけてくれないだろうか。
同じ気持ちじゃなくたっていい。
一瞬、一秒。
もうなんだっていいから。
だから。
俺を、
「会長っ!」
その目に映してくれないだろうか。
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