※3
「なぁ、なぁ。俺思ったんだけどさ。」
それでも一抹の希望を抱いて、委員長を見つめていた田中にかけられる声。
顔をむければ、いやに真剣な顔をした慎吾の姿。
「なに?」
「俺、気づいちゃったんだよ。」
「だから何に?」
委員全員を見回して、声を潜め話す慎吾の表情はいたって真面目だ。だが、風紀委員会アホの子代表である慎吾の言葉に真剣に耳を傾けるやつは少ない。
またアホなことを言うんだろう。
そんなことを思いながら、視線を委員長に戻す。
「あのさ、あのさ。俺、今まで風紀のトップって委員長だと思ってたんだ。委員長、怒ったら怖いし。怒らなくても怖いし。」
「まぁ、そりゃそうだろ。委員長なんだから。長、ついてんだから。」
「でもさ。委員長が怒っても、俺たちこんな大変だった? こんなに生きづらかった?」
生きづらい、ってそこまで?
そこまで............、そうかもしれない。
「俺思ったんだけどさ。委員長が機嫌悪いときは、副委員長が和ませてくれただろ。なんかよく分かんないことして機嫌とったり。だけど今の委員長、全然」
役にたたないし。
流石に、そこは心のなかで言ったらしい。全員そう思っているからか、言わなくても十分伝わった。
「だからさ、」
「うん、うん。」
「俺たちの平穏は、」
「桜庭先輩の恋が実ることだろうねー。」
「ぇ、」
真上から降ってきた声に顔を上げる。
そこには目立つ銀髪と。
いつの間に移動したのか。
会長の肩に手をのせて、その耳に何かを囁く委員長の姿が見えた。
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