風紀室と会長
「会長。」
「なんだ。」
「コーヒー零れてるよ。」
「え、あちっ......!」
もくもく、といかなくとも、ゆらゆらと湯気を上げるコーヒー片手に、ソファーへ腰かける。
目の前でインスタントコーヒー相手に悪戦苦闘している会長を眺めがら、近くのタオルに手を伸ばす。
「会長、これ使って。」
「あ、あぁ。」
決して謝りはしないものの、ばつの悪そうにそれを受け取り、そっぽを向く会長に苦笑が漏れる。
「もういいって、会長。俺、大丈夫だから。」
まだ、さっきの出来事を気にしているような会長へ、そっと声をかける。机に置いたコーヒーへ利き手の右を伸ばした。
だいたいあれは、ただ俺が驚きすぎたというだけで、会長は何も悪くない。
ドアの裏候補のなかに、会長を入れていなかった俺が悪かった。
流石に驚きすぎた気がしないでもないけど、それはきっとあの夢のせいで。
会長には言わないけど、おかげで机の角で打ち付けた腰が、まだ痛む。
「あ、あぁ。そうか。なら、いい。」
「うん、ありがとう。」
「あぁ。」
会話が終わって、落ちるのは沈黙。
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