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「あれ、愛先輩は?」
錦と話していると、いつも後ろから挟み撃ちのように攻撃してくる愛先輩がいない。いつも二人でいるところを見るだけに、不思議だ。
「あー、愛ちゃんですかー? まぁ、あの人は色々あって傷心中というか。」
「しょうしんちゅう?」
前髪を弄りながら、ニヤーと笑う錦に驚く。
しょうしん、って傷つく心であってるよね。愛先輩が傷心なんて、想像できないけど。
「そう、そう。自分が大切に大切に育ててきた花を、ある日、その時までなーんの興味も示さなかった人がきれいさっぱり持ってっちゃったって感じ? あーいやまだ持ってってはないか。時間の問題だろうけども。」
「へー。」
錦が何を言ってるのかさっぱりわからない。
「まぁ、仕方ないことなんですよ。花にも心があるからねー。育てた人と持ってっちゃう人でも気持ちの種類が違うし。」
そう言い、なぜか俺を見る錦はそのまま口角をもっとあげ、
「先輩ならどーしますかぁ? どこかの鈍感バ......失礼。に、5年間片想いしていた友達がいたとして、突然その鈍感がその友達に興味を持ち出す。......なにかあると思っちゃいませんか? もしかして気持ちに気づいたのかとか。」
「あー、いや、」
「それでからかっているのか、とか。」
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